豪雨にさらされ、大きな水害のニュース映像が届きました。
濁流いっぱいの川を見たことありますか。
もしご覧になったとしたら、そこは大きな川?もともとは小川のような川?
私の家は、すぐ近くが利根川。「水害、心配かな・・」と言ったら、「利根川じゃなくて、中小河川が心配なんだよ」と言われました。たしかにそうですね。豪雨であふれ、決壊するのは、普段は小さな小川のような流れの川、だったりですから。利根川は、むしろ洪水対策の進んでいる川になるのでしょう。
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下仁田町は鏑川という川に沿った町です。
川にある青岩公園は、西牧川(鏑川)と南牧川の合流地点。地質の全く異なる地域を流れてくる2つの川は、違った種類の石を運んできます。そこで、多くの種類の石が転がっていることになり、川原の石の観察会がしばしば開かれます。
場所は下仁田駅のすぐ近くです。
(ついでに書けば、この付近には大きな断層の中央構造線が通っています。断層は岩石がグズグズに壊され、周りから見れば柔らかくなっているわけで、それも、ここに川が流れていることに関係しているのでしょう)
青岩公園 かつては富岡市の小学生の遠足の 定番の場所だったそうです。青緑のこの岩は「青岩」と呼ばれています。 |
川原の石の種類の学習ばかりでなく、ちょっと違った視点でこの場所を見てみましょう。
上の青岩公園の写真で、木の下にある大きな石の拡大です。 川底からずいぶん上の方にあります。誰が運び上げた? |
川の中には青緑色の岩が露出しています。青岩と呼びます。
左写真にある丸っこい大きな石、青岩の上に乗っています。でも2007年(平成19年)より前にはこの大きな石は、ここにはなかったのでは・・
突然現れた・・・!!
運んだのは・・と聞くと
「洪水!!」と答えが返ってきます。でも、頭の中では知っていても、実際に目の前にみると、実感がこもります。
他にも岩塊が転がっています。
洪水の時、水が青岩の上に運び上げた石を、いくつか紹介します。
細長い棒のような石が引っかかっています。 これ、岩石の柱状節理、です。 |
左写真のものを横から見ると、こんな感じ これ、確実に2007年より前には、ここになかった |
これも結構大きな石です。 |
もちろん、川原にも巨石がゴロゴロ |
岩の位置を右写真に見えているものを、黄色矢印で示しました。
黄色〇の中は人です。
次はこの川の2016年8月30日の大雨の後の写真です。この時、上の写真の石ころは、水面のずっと上に見えていますから、もっと水の多い洪水があったこともわかります。
これらの写真は
川にかかる橋から撮りました。
膨れ上がった濁流は大きな力を持っているはずで洪水の時は、石がぶつかるゴロゴロという音も聞こえたそうです。
この橋から写真を撮りました。 濁流は流れていますが、橋げたの下には ずいぶん余裕があります。ですが、この橋がもう少しで水没しそうなこともあったそうです。その時は この近くで浸水被害もありました。 |
いつもの川のようす |
左は普段の川の様子です。
穏やかなものです。
2007年の豪雨災害では、上流の南牧村が土砂崩れなど大きな被害を被り、ニュース映像にもなっていました。
下仁田でも、この公園の上にある駐車場は水をかぶり、車が流されたとか。その折、この場所の橋は水をかぶりませんでしたが、そのわきにあった縫製会社は浸水し、反物が水をかぶってしまったといいます。今その場所の建物は取り壊されています。
ここの橋は水をかぶりませんでしたが、他の橋では、水没した橋もあったということです。
青岩公園の近くには、下仁田の小学校中学校があります。子供たちは、ぜひこんな場所に来て、自然の力を学んでほしいものです。
一方、昔ここには、こんなに砂利はなかった、という声もききました。
もっと水が深く、きれいだったとも。
川の流れの様子も変わっていくようです。
このすぐ下流で、用水の取水口ができてから、砂利が多くたまるようになったような気がする、という人もいました。 削ったり、運んだり、堆積させたり、「流れ」というのは、実に複雑なものです。ちょっとしたことが大きな影響を与えるのですから。
最近は、防災教育というのが言われ、NHKの学校教育番組には、[学ぼうBOSAI]というものまであります。
川の石という、こんな身近なもので、防災の知識や科学的な感覚を磨くことができます。
川の石という、こんな身近なもので、防災の知識や科学的な感覚を磨くことができます。
かつては、人は自然の大きな力を感じて畏れ神に祈ったわけですが、今、大きな力を持った人間は、自然をねじ伏せるだけでなく、自然の声に耳を傾ける姿勢を身につける必要が、以前にも増して必要なのかも。傲慢になりますから。
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子供の頃、台風の後の利根川の増水した様を、見に行ったものです。怖いもの見たさですね。最近ニュースで「大雨の時、川の様子を見に行ったり、田んぼの様子を見に行ったりしないでください。危険です」などとしばしば言っています。その通りでしょう。でも、子供が利根川を見に行ったのは、台風が通りすぎて、青空が見えてきてからでしたから、見に行ってもOKだったかな・・。
当時は戦時中の木の乱伐で、森の木の水を貯える働きが弱まり、洪水が起きやすくなっていたといいます。大変な「大水」という感じは、子供だったからだけではないのでしょう。
今は「線状降水帯」などという言葉も出てきて、雨の降り方が苛烈になっているように思えます。自然を侮ってはいけないと、心底思います。
子供の頃、台風の後の利根川の増水した様を、見に行ったものです。怖いもの見たさですね。最近ニュースで「大雨の時、川の様子を見に行ったり、田んぼの様子を見に行ったりしないでください。危険です」などとしばしば言っています。その通りでしょう。でも、子供が利根川を見に行ったのは、台風が通りすぎて、青空が見えてきてからでしたから、見に行ってもOKだったかな・・。
当時は戦時中の木の乱伐で、森の木の水を貯える働きが弱まり、洪水が起きやすくなっていたといいます。大変な「大水」という感じは、子供だったからだけではないのでしょう。
今は「線状降水帯」などという言葉も出てきて、雨の降り方が苛烈になっているように思えます。自然を侮ってはいけないと、心底思います。
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~~~ ちょっとおまけの解説 ~~~~~
~~~ ちょっとおまけの解説 ~~~~~
流水が物を運ぶ力は、流速のおよそ6乗に比例するということなので、流速が2倍になると運搬力は2×2×2×2×2×2=64倍、
流速が3倍になると3×3×3×3×3×3=729倍!
さらに水が泥を含めば浮力が増して、ますます軽々と石を運べるというわけです。土石流のようになれば、それこそ、軽々でしょう。
数字だけで見ていても、実際の大きさ・重さが感覚的にわからないのが、残念。
でも、6乗というのはびっくりです。1kgのものを運んできた水が、流れのスピードが3倍になると、729㎏のものを運べるということ? でも物の大きさ・形でも違ってきますよね。水の量はたっぷりとして,丸いのと平べったいのは、水の抵抗も違うでしょう。浮力も働くから、大きさ(体積)との関連も考慮せねば、・・・とか考え始めたら、えーい、面倒くさい・・誰かに教わった方がいい・・などと、すっかりナマケモノになりました。
鏑川のあの大きな石を運んだ流れは、どんな流れだったのかな?
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流速が3倍になると3×3×3×3×3×3=729倍!
さらに水が泥を含めば浮力が増して、ますます軽々と石を運べるというわけです。土石流のようになれば、それこそ、軽々でしょう。
数字だけで見ていても、実際の大きさ・重さが感覚的にわからないのが、残念。
でも、6乗というのはびっくりです。1kgのものを運んできた水が、流れのスピードが3倍になると、729㎏のものを運べるということ? でも物の大きさ・形でも違ってきますよね。水の量はたっぷりとして,丸いのと平べったいのは、水の抵抗も違うでしょう。浮力も働くから、大きさ(体積)との関連も考慮せねば、・・・とか考え始めたら、えーい、面倒くさい・・誰かに教わった方がいい・・などと、すっかりナマケモノになりました。
鏑川のあの大きな石を運んだ流れは、どんな流れだったのかな?
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発掘現場
八ッ場ダム工事に伴う発掘現場の見学をさせていただきました。ちょっと前の、7月初めのことでしたが。
大変ていねいな説明をしていただきましたが、まだ調査結果発表前ということで、内容や写真は、あまりお伝えできません。林地区の発掘現場で、天明噴火の時に埋まった畑あとで、畦が残っていました。中世の掘っ立て柱跡もありました。災害の後、すぐに復旧に取り組んだ場所と、そうでない場所といった違いなども、現場で説明していただきました。
中棚Ⅱ遺跡 |
実はこの地域は縄文時代の遺跡がとても多く、平成2年、3年の長野原町の遺跡分布調査で、180数か所もの遺跡記録が書かれたうち、半数は縄文、半数は平安といった感じだったとか。この縄文遺跡数はとても多いといえ、大規模集落がいくつもあったのだそうです。ここも掘り進めれば、きっと縄文遺跡も出てくるのでしょう。
ところで、この見学、群馬県の機関に問い合わせて実現したのですが、実は別の場所をお願いしていたと聞きました。県からはOKが出ていたのですが、工事担当の国交省がダメ、と。住民がすでに全戸立ち退いていて、立ち入り禁止区域になっており、工事中で車両も動くから、と。再度問い合わせても、ダメと。
これだけ聞けば、「危ないから」と理屈にあう話なのですが、でも、今、ダム工事見学を大々的に売り出していて、現場まぢかに立ち入る場合もあるような。先日は、NHKの探検バクモンでも、大々的にダム工事を賛美して放送してましたし。それと比べると・・・・よっぽど、発掘現場は見せてくないんだろう、関心を持ってほしくないのだろうと、思わずにはいられません。こうした文化遺産は、多くの人に見てもらうべきものなのでは。
すべて破壊されて、以後、決して見ることのできない発掘現場。
発掘では、たいてい、見学会が企画され、新聞等で宣伝され、多くの人が見に行くもののような気がするのですが。我が家の近くでも、そういう企画は行われていました。
多くの場所で、今は天明の噴火の遺跡から下に掘り進んでいて、縄文遺跡などが出ているのでは・・・ここは多くの縄文遺跡もある場所なのですがね。
ところで、群馬県埋蔵文化財調査事業団のHPによれば、6月の発掘記録は、この八ッ場ダム関連が圧倒的に多いです。いかに大規模におこなわれているか、と思えてしまします。
以下に、発掘最新情報を転載します。石畑岩陰石は、以前のブログで、貴重な遺跡なのにまだ取り組まれていないようだが、いったい発掘が間にあうのだろうかと書いた遺跡。始まったということですが、工事現場の駐車場の発掘とのこと。天明の畑跡などが出てきたといったものだそうです。核心部は、まだまだこれからでしょう。
下のリストでは石畑Ⅰ岩陰遺跡から下は、すべて八ッ場ダム関連です。
- /07/26金井下新田(かないしもしんでん)遺跡= 平成29年6月調査=
- 2017/07/25前橋市0946(まえばししぜろきゅうよんろく)遺跡 =平成29年6月調査=
- 2017/07/25万木沢B(まんぎさわびー)遺跡= 平成29年6月調査=
- 2017/07/25高崎競馬場(たかさきけいばじょう)遺跡= 平成29年4月調査=
- 2017/07/25沼田(ぬまた)遺跡 =平成29年6月調査=
- 2017/07/10石畑Ⅰ岩陰(いしはたいちいわかげ)遺跡 =平成29年6月調査=
- 2017/07/10東宮(ひがしみや)遺跡 =平成29年6月調査=
- 2017/07/10西宮(にしみや)遺跡 =平成29年6月調査=
- 2017/07/10石川原(いしかわら)遺跡 =平成29年6月調査=
- 2017/07/10中棚Ⅱ(なかだなに)遺跡 =平成29年6月調査=
- 2017/07/10下原(しもはら)遺跡= 平成29年6月調査=
埋蔵文化財調査団のHPは以下です
http://www.gunmaibun.org/remain/iseki/hakkutu-iseki_list.html