2020年5月27日水曜日

アシが育っています オオヨシキリの声

あっという間に5月が終わりそうです
 コロナウイルスで外出自粛、あらためて外の空気のありがたさを感じる日々。
 そんな呑気なことをと、収入の道を断たれた方々のことを思うと、申し訳ない。



 庭の花を飾ってみました。
小型の花をつけるヤマアジサイは、ちょっとした入れ物にちょうどよく収まります。
残念なのは、水揚げがむずかしいので、なかなか長持ちしてくれないこと。



昨秋、バラバラと蒔いておいた種から、
たくさんの花が咲きました。
ニゲラ(黒種草)といい、昨年種を取っておいたものです。
込み合ったところを間引く程度で、何の手入れをしなくても、こうしてたくさん咲いてくれます。我が家の庭は、こんな感じで手のかからないものばかり。
このあと、ドライフラワーになる実をつけます。私はあまり好きではないのですが。


 土手にアザミの花が咲いています。アザミの仲間は、日本に100種ほどもあるといのことで、区別の難しいことで知られます。とはいえ、だいたいは秋に花をつけますから、5月の頃に見られるのはほぼこのノアザミです。
世界に300種ほどといいますから、日本にはなんとまあ、たくさんの種類のあることか。ほとんど、地域の固有種です。
 花の頭をそっとさわって、そしてよ~く見てください。ツンと飛び出た蕊しべが左右に揺れたり、あるいは何やら白っぽい粉がムクムクと出てくることがあります。この粉は花粉です。花に虫がとまると、下に隠れていた花粉が、チャンスを逃さず出てくる仕組みがあるのだとか。
 写真の花、すでに花粉は先っぽに・・・ほかの花をそっとさわったのですが・・うまくいかないなあ・・・
でも、ムクムクの様子、何度か見たことはありますから、チャレンジしてみませんか。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

オオヨシキリ

周囲はもう緑濃くなってきました。
川辺ではヨシがツンツンと芽を出していました。いえ、あっという間に大きくなっていました。こんなヨシについて紹介したことがありました。

 草野心平の作品で、富士山がテーマだけれど、ヨシとそこにやってくる鳥・ヨシキリが登場していました。季節はすこし前ですね。
20年以上前に書いたものだけれど、整理しているといろいろ出てきて、ちょっと紹介。ずっと昔、学校でこんなものを学んだのだなあ、と。
     
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
                  



                     草野心平

 川面(かわづら)に春の光りはまぶしく溢れ。そよ風が吹けば光りたちの鬼ごつこ葦の葉の
ささやき。行行子(よしきり)は鳴く。行行子の舌にも春のひかり。


  土堤の下のうまごやしの原に。
  自分の顔は両掌(りょうて)のなかに。
  ふりそそぐ春の光りに却つて物憂く。
  眺めてゐた。

 少女たちはうまごやしの花を摘んでは巧みな手さばきで花環をつくる。それをなわにして縄跳びをする。花環が円を描くとそのなかに富士がはひる。その度に富士は近づき。
とほくに坐る。

  耳には行行子。
  頬にはひかり。           


 高校の国語の教科書でこの詩を読んだとき、こんなに明るく春の光を感じさせるヨシキリって、どんな鳥かしらと思いました。でも、鳥といえばスズメとカラスとハト、せいぜいオナガくらいしか、とんと縁のなかった者には、こんなにも明るくキラキラ輝いて感じられる見知らぬ鳥は、はるか遠い存在でした。ずっと後、その鳥はその気さえあればいくらでも見られることを知りました。
 川に囲まれた町、ヨシのしげる水辺、川辺にあふれたこの町では、キラキラした川の水のきらめきと、そしてあのいっぱいにひらいた大きな口に春の光、初夏の風を感じることができるはず。川沿いのサイクリングロードを走りながら、草野心平のように、心の感性をみがいてみたくありませんか。今、ヨシの繁る場所ならどこでも、盛んに鳴いている声を聞くことができます。夜になっても鳴いていたりします。

 5月初めにやってきて、ヨシのさきっぽなどで、よくまあ声が涸れないものだとあきれるくらい鳴いています。
この声を「ギョギョシ、ギョギョシ、ケケケケ」と表現したりします。そこで俳句ではこの鳥を「行行子」と詠むのだそうです。
 スズメより大きめの鳥で、姿は地味ですが、繁殖期にはその派手な声で、居場所がわかります。もうしばらくの間は鳴いているはずですから、姿を見るのは今がチャンスです。
 冬はインドシナ半島、フィリピン、インドネシアなどですごし、夏は日本で子育て、寒くなると、また南にわたっていきます。
それにしても大旅行です。
     ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ヨシの茂みの中にいるわけで、普通に生活しているとあまり姿は見ない鳥、というわけで、オオヨシキリの写真なんてない。(オナガという鳥はこのあたりでは普通にいますが、見られる地域は少ないようですね。)

こんなこと書きながら、最近、ヨシキリの声なんて、聞いたことないのです。
ヨシ原がなくなったわけではなく、10分も歩けば利根川の川原にいけるし、自転車で10分も走れば、広いヨシ原の見える所です。
目が向いていないと、人って、いろいろ気づかずにいるものです。

 最近、利根川の川原は賑やか?です。
河床を掘ったり、土砂をとったりと、ショベルカーやトラックが走り回っています。とにかくあちこちで。見渡す限り、何もやっていない場所はないのでは、という感じです。
昨年の台風による大増水後、洪水対策で河床の土砂撤去などを行っているのです。
次回から、紹介しましょう。

 そうだ、川べりをみるなら、トラックや土嚢ばかりでなく、オオヨシキリたちなども探そう。
 昔は5月に入ってしばらくすると、カッコーの声がひびきました。
その頃に豆の種を蒔くとよいと教わって、インゲン豆など蒔いたものです。最近、カッコーの声は聞いたことがないなあ。夏鳥が減少していると聞いていますが・・・
ちなみに、豆の芽はもう出てきていますね。

 コロナ禍で多くの人があれこれ思うところがあると思います。
 身近な自然、あらためて見直して、大切にしたいです。


2020年5月14日木曜日


田舎にいると、人とほとんど会わずに歩くことが出来ます。ありがたいことです。
   ”毎日家の中”では、やっぱりストレスありますよね。
 利根川の土手を歩くと、たまにすれ違う人、結構マスクをしています。
暑いし、人と接することもないのだから、しなくてもいいのでは・・・と思うのですが。
 悩ましい話です。
「呑気なこと言ってるな! こっちは仕事が続けられるかどうか、食べていけるかどうか、大変なんだ」と、怒られそう。

 中国では、高性能マスクをつけて体育の授業中、亡くなった子が・・酸欠?
 昔、自転車で学校へ通う時、冬には、ガーゼを折って紐をつけただけのマスクをしたものでした。冷たい空気、冷たい風が、マスクを通すと暖かくなったのです。
 これからは暑い熱中症の季節。「冷やしマスク」を売り始めたとか。考えるなあ~


近所の川辺・道端   花 新緑  
4月・5月は 平地は花いっぱいの季節・緑滴る季節なのですが、今年は出歩けませんね。  近所でちょっと散策。
流れは右から左方向へ。小石の広がる川原です。
河畔林も続きます。アカシアがたくさんあるなあ。
堤防を歩くとさわやか。
 昨年秋の大増水のあと、利根川では川のあちこちで土砂を掘り取っています。
河床を下げての洪水対策。
大慌てに始めた、と見えてしまいます。
 洪水に備えてと、ダム建設に巨費を費やしてきて、いままで、こうした事業にはあまりお金をまわさなかったのでは。

 ところで写真の矢印、ここまで細長く深く掘り取っていて、入江のようになっています。何のためかな。生き物のため?

アカシアの花がたくさん


 川沿いはアカシアの白い花がいっぱい。
花は風にはらはらと舞い落ちて、私にも降りかかる。 まさに
   ”アカシアの雨””
甘くさわやかな香も漂うのですが、
この木、日本では生態系を壊す「侵略者」
なのですよね。
アカツメクサ 遠くには谷川岳の白い峰が

堤防わきにはアカツメクサの丸い頭がかわいい。
 シロツメクサは白い花。そこでは四つ葉のクローバーを探しました。こちらは赤い花。
 札幌に地下鉄東西線が開通したころでしょうか、車体だったかホームの壁だったかに、よく見かける花などがデザインされて描かれていて、素敵でした。


その一つがこのアカツメクサでした。全体の色使いもいい感じと思ったものです。
 スズランやハマナス、時計台なら札幌、北海道を代表するのに普通ですが(これらもあったような気もする)、これを選んでいるのが、なんだか斬新に見えました。牧草として明治時代に移入されたものだそうで、なるほど、酪農の牧草地の広がる北海道らしいものになるのかと、納得。原産はアジア西部から中東だそうです。

シュロの花
 




すこし前になってしまいましたが、シュロの花も川辺の藪の中に咲いていました。ご覧になったこと、ありますか。幹にはモジャモジャと繊維が絡みついていておおっています。
 以前、多くの家の庭にはシュロが植わっていました。写真のものより葉がカッチリして姿の良いトウジュロの方が鑑賞価値がありました。
 いろいろ利用しされた植物で、亀の子タワシはもともとこの幹につく繊維から考案したといいますし(ロングセラーの代表格なのでは)、シュロ縄という言葉もあるし、祖父は葉でハエたたきなんて作っていたなあ。お寺の鐘つきの棒にも、よく使われるのだとか。
都会の公園などにもはえてきて、邪魔ものかも。





麦秋の頃です




冬の田んぼで麦を栽培する地域です。もうすぐ刈り入れ時。
実りの秋のような情景が、
 「麦秋」

小津安二郎の映画の題名が浮かびます。
この方の映画に、何が面白いんだろうと思い・・大きな評価を得ているということに、ものを見る目ということを思ったりしました。




麦畑に何やらぽつぽつ青いものが
 こちらは花畑?  いえ、麦畑に雑草の矢車草がはえているのです。はえてしまった…
そして取り去る努力をしていなかった。手前部分は、麦もまいていないかな?

親から受け継いだ土地だから、放っておくわけにもいかず(やがて藪になってしまう)、さりとて面倒を見ることもなかなかできない・・・
 風にそよぐ麦畑の光景は、人の努力がなければできないのです。



道端の花

スイカズラ(ニンドウ・金銀花)
 
上品な甘~い香りと、甘い蜜
白からクリーム色に色が変わり、花の姿もいい。
でも、ヤブの端などに絡みついて、やはり野の草。
さまざまな名前を持つのは、皆によく知られているからだろうか。
 アメリカに観賞用に持ち込まれて、野外に逃げ出しどんどんふえ、困りものの植物になっているとのこと。ちょうど、アメリカから持ち込まれたアカシア(ニセアカシア)が、日本で困りものになっているように。


チガヤ

言わずと知れたヘビイチゴ
赤い点々に見える実がかわいい









クサフジ

   




      土手や空き地に揺れる銀の穂、チガヤ。
   ツバナとも呼んで若い穂を噛んでかすかな甘みを 
   味わったといいますが、私はやったことなし。
    「世界最強の雑草 
       侵略的外来種のワースト100のひとつ」
   ひ~ です。日本では在来種なので問題なく他の
       植物と共存しているのですけれど・・・
         


アカバナユウゲショウ

これも最近よく見ます。きれいな花。
コンクリートの隙間にだって育ちます。
10年前にあったかなあ・・

アカバナユウゲショウ

侵略的外来種になんてならないでね・・

ナガミヒナゲシ 


こちらは心配。ナガミヒナゲシ。赤くきれいな花が、最近はどこにでもはえています。
 ごく最近、見かけるようになったなと思っていたのに、もう、あちこちで見かける。
  庭にもどんどんはえてくる・・・

マツバウンラン



マツバウンランは、少し前、4月にあちこちに咲いていました。
きれいな青い色でゆらゆら揺れる姿は魅力的です。
はじめて見たのは渡良瀬遊水地で10年も前ではないと思うけれど、今年など、我が家の近くの堤防には花がいっぱい。

 
グローバル化は野の草の世界にも、ますます顕著です。
喜ばしいことではなくて、これには注意が必要です。
私の住む地域では、道端の草は、実は外来種だらけ。
一方で絶滅危惧種に登録される植物も数多いのです。
絶滅種を増やさないようにと、思うばかりです。


  

2020年5月10日日曜日

おきなぐさ 賢治は野の花も愛しました

 新型コロナウイルス感染防止で家にいるのを、巣ごもりと呼ぶような。とはいえ、運動しないと・・・。人は走り回って食料を得て生き延びてきたので、そうした生活に適した身体になっているとのことですから。
 テレビに映ったコマーシャルが、ふと目に留まりました。
大股で歩く女性の姿。背筋を伸ばして目線は上で、かっこいい。アパレル業界のコマーシャルです。
 私がこの女性の年頃のころ、大股で歩くなど、目をひそめられこそすれ、好まれることなどなかったと思う。女性は歩幅小さく、うつむき加減にちょこちょこと付き従って歩くのが好ましい、といったイメージだったでしょうか。。和服の女性はせまい歩幅でしか歩けませんし。お姫様は、あの重い服を着て、きっと健康にはよくなかっただろうな。
  世の中、変わるのですね。これはうれしいことです。


  オキナグサ

春の自然はあっという間に姿を変えます。
つい先日見たオキナグサのつやつやした穂,もう綿毛になって飛んでいます。
 この綿毛は、取ってすぐに土に蒔くと、すぐに芽がでてきます。
 すぐに蒔かないと発芽してくれません。
 我が家のオキナグサは、みんなこうして種を蒔いて手に入れました。   



八ッ場ダムに沈んだ民宿のご主人が庭に植えていました。「この種もらっていいですか」とねだって、もらった種を蒔きました。        
みなかみ町の農家の道脇に植えていた園芸品種で、昔、札幌でこの色のものを育てていたことがありました。種苗会社で売っていた種を買って、蒔いたものでした。
綿毛が飛ぶ頃、この種をちょっともらって(黙っていただいたのですけど)、育てました。
やけに黒い時もあります


もう一つ、白いオキナグサがあるのですけれど、
あれ、写真撮ってなかった。これも種をいただきました。


~~~~~~~~~~~~~~~



オキナグサ大好きの人がいました。 宮沢賢治です。
文を紹介しましょう。

 おきなぐさ 「春と修羅」より
風は空を吹き
そのなごりは草を吹く
おきなぐさ冠毛の質直
杉とくるみは宙に立ち            
 (どこのくるみの木にも         
   いまみな金の赤子がぶらさがる)
ああ黒のしゃっぽのかなしさ
おきなぐさのはなをのせれば
幾きれうかぶ光酸の雲
くるみの花穂

 
賢治はくるみも大好き。川辺でくるみの実の化石を探したりもしています。我が家の近くの川辺にも
くるみが花の穂を下げています。

まだまだおきなぐさを取り上げた文があります。
学生時代に書いたものとのことです。

                           をちやまに雪かがやくを雪脚の
   おきな草のなだらの夕陽に

七つ森にはおきな草咲く           
あさましきまでむらがりにけり





長い文章も

おきなぐさはその変幻の光の奇術(トリック)の中で夢よりもしづかに話しました。
「ねえ、雲がまたお日さんにかかるよ。そら向ふの畑がもう陰になった」
「走ってくる、早いねえ、もうから松も暗くなった。もう越えた。」
「来た、来た。おおくらい。急にあたりが青くしんとなった。」
「うん、だけどもう雲が半分お日さんの下をくぐってしまったよ。すぐ明るくなるんだよ。」         以下 略

  こんなぐあいに、刻々と変わる雲や光、風の情景を活写していくのです。
きみかげさう(すずらん)

 「まっ赤なアネモネの花の従兄、きみかげさうやカタクリの花の友達、このうずのしゅげの花をきらひなものはありません。」
  きみかげ草はスズランです。そういえばスズランも、今、我が家の庭に咲いています。日本原産のものではなく、園芸種のドイツスズランですが。
  カタクリは我が家のあたりではほとんど育ちませんし、花も3月末ですが、群馬の北の方に行けば、5月に咲いています。うずのしゅげはオキナグサです。この地方での呼び名のようです。
岩手に行けば、どちらかというと北国なので、みんな一斉に咲いて、同時に見られるのでしょう。

庭の花から、思いがけず宮沢賢治に出会った気分でした。

ところでこのオキナグサ、今、絶滅危惧種で、野生のものはほとんど見られません。
草原にはえるものなので、そうした環境がなくなっていることが大きな原因となっています。もちろん園芸採取もありますが。
  みなさん、野生の植物、ぜひ守ってください。




そういえば、同じころ、畑ではネギ坊主が丸い頭を一杯広げています。
「これ食べられるんだよ」と言われました。
てんぷらや酢味噌和えで。ただし、坊主がまだ薄い皮に包まれた頃がいい。

 う~ん、積極的に食べるというほどでもないけれど、この季節だけのものだから、一度は味わってみてもいいかも。
 春は、山菜を代表に、色々食べられるものがありそうです。






2020年5月5日火曜日

アカシアの花

手洗いのできない人たち

 コロナ禍への不安・・・
 基本的な対策は手洗いですが、それのできない人たちが世界にいます。
 そんな人が、お金持ちの国、アメリカでもいると聞いて驚きました。
 
 米国最大の先住民居留地・ユタ州ナバホネーションで、新型コロナが流行しているというのです。独特の地形メサのそびえる場所、と聞いたら、どこかで写真を見ているのではと思うのですが、そこに住む人は「手洗いは手の届かない贅沢、住民の3割が水道を利用できない、20~30マイルは慣れたところに水を汲みに行く」。アメリカのまさにど真ん中にこうした暮らしがある・・・もともと居留地は、先住民が押し込められた場所です。人にとっては住みやすい場所ではなかったはず。 こうした格差は悲しい。

あかしあ ニセアカシア

アカシアの花
アカシアが甘い香を放ちはじめました。
コロナ流行で外にあまり外に出られないかもしれませんが、もしこの香に気づいたら、胸いっぱい吸い込んでみませんか。

 私の住む地域では利根川沿い、烏川沿いにこれからたくさんの木が白い花房を下げます。木の下はヤブのようになっていて近づきにくいのですが、こんな木も一本一本大切に植えて街路樹にしたこともありました。札幌ではかつて並木に一番多く植えられたそうで、住んでいた時、花の頃はその香に、忙しくしていてもふっと心をなごませ、木を見上げたものです。
 そんなに利用したのにあまり大切に思ってもらえないのは、根からいくらでも芽がでて荒れ地で育ち、すぐに大きくなるというその雑草のような性質からでしょうか。北アメリカからやってきて、お日様がよく当たってじめじめしていない所ならどこでも育つ、つまり荒れ地に最初にはえて、緑にしてくれる、そんな木。パイオニア・ツリーという言葉にぴったりの木。一度植えると次々芽を出し、絶滅困難。実にたくましい。というわけでちっとも大切には思ってもらえない。でもパイオニアのたくましさはなんだか夢を感じさせてもくれました。
 日本にはじめて持ち込まれたのは明治6年という木です。

 アカシアといえばハチミツ。近所でもミツバチの巣箱を見ます。この町産のハチミツも売っています。花を天ぷらにすることも教わりました。花のあまり開かないものを房ごと薄い衣に付けて天ぷらに。また花をばらして、さっと熱湯に通して三杯酢にとか、塩漬けにしていた人もいました。

 このアカシア、蜜といい、花といい、どこもたいへんおいしそうですが、じつは、葉や果実を食べると吐き気や下痢を起こすそうです。木の皮も同じくで、有毒植物一覧表に載っていました。
~~~~~~~~~~
 ところでこのアカシア、今では「困った植物・要注意外来生物」に指定されています。
日本の侵略的外来生物ワースト100に入っていて、26種選ばれた維管束植物のひとつ。
生態系への影響の大きい種なのです。確かに、ヤナギなどのはえていた場所がこのアカシアに覆われているのですから、もともとこの地に生きていた者たちが追い出されているわけです。取り去って減らそうとしても、すぐに育ってくる・・・
庭にも次々と花が咲いてくれる季節

 世界中のどこでも、このアカシアが咲くころが一番いい季節、と聞いたことがあります。なるほど、そんな気がします。さわやかな空気、若葉と薫風、庭には様々な花が咲きほこっています。
 でも、待てよ、もともとアメリカに育っていた木が、今では世界中に広がっているということを示してもいるのかも・・・


 ある年齢以上の方なら、歌の歌詞が思い浮かぶかもしれません。
 「この道はいつか来た道 ああ、そうだよ アカシアの花が咲いてる」
 「アカシアの雨に打たれて このまま死んでしまいたい・・・   」
思い出した人、いますか?
けっこう愛されてきた花なんですけど・・・

~~~~~~~~~~
 ところで、アカシアと書いてきましたが、この木、本当の名前はニセアカシア(ハリエンジュ)です。アカシアは熱帯原産のまったく別の樹木で、オーストラリアやアフリカに多い木で、熱帯・温帯に見られるといいます。このアカシアの仲間は500種とか600種とか種類があるそうですが、一部は花屋さんで売っています。花屋さんでの名前はミモザ。黄色い小さなポンポンを散らしたような花。ゆで卵の黄身を裏ごしして散らしたサラダをミモザサラダと呼んだりします。
 3月8日の国際婦人デーにヨーロッパなどではこの小枝を手に取って集う習慣があると聞きました。
 春を迎えるうきうきした心の高まりと晴れやかな女性たちの姿が、愛らしく明るい黄色の房の小枝とともに、平和を願う心に連なっているようにも思えます。