2016年3月26日土曜日

氷河時代の生き残り・里のカタクリ 

 

春は忙しい


雪の中でも咲く花、早春の花ザゼンソウを紹介したばかりですが、
群馬の平地では、ソメイヨシノがちらほら咲き
  そして、人気の花、カタクリが咲いています。

のんびりしていると花が終わってしまうので、急いで紹介。

高崎市吉井町小串(おぐし)のカタクリです。3月24日の様子。
我が家からは20kmに満たない距離で気軽にいけて、しかも道路沿いなので、足腰の弱い人でも見ることができます。  5万株の群落だそうです。
                                                    
一週間前、通りがかりに見たら、つぼみがたくさん上がっていました。 友達といっしょに見に行く約束なので、天気予報が晴れで、みんなの都合のつく日で、混み合う土曜日曜を避けて・・で、この日になりました。でも、強風で寒かった・・・日差しもあまりなく・・次の日、土曜日は、予報ではくもりでしたが、うららかな晴れ。カタクリは、晴れると花弁がくるっとよく反り返ると聞いたのですが、そうなると華やかで美しい。・・・写真は花びらが少々下向き加減で、色もなんだか薄いようでした。
そこで、一昨年とった写真も載せてみます。
 


カタクリは種から糸のような芽を出し、やがて1枚の葉っぱをだし、出る葉っぱが年ごとに大きくなり、2枚の葉が出て、ようやく花をつけます。7~8年、9年がかり。(生まれた子が小学生になってしまう)。
落ちた種子にはアリが好きな物質がくっついていて、それでアリが巣まで運び、そうやって分布を広げるとか。何とも気の長い話です。ゆっくりゆっくり分布を広げます。
 こんな解説、最近はあちこちで聞かれるようになりました。ご存知だったでしょうか。
 



左上から順に、「最初の年の発芽、小さな一枚ずつの葉、少し大きくなった1枚だけの葉、そして 
2枚になって花をつけた株」


写真がみんなボケていて、お恥ずかしいことこの上ないのですが、お許しを。

(ところで、案内看板に描かれた カタクリの絵、1株から花茎が2本ずつ出ていたのですが・・間違いではないかな・・花は1つずつではないかな)
 

関東の太平洋側に育つカタクリは、じつは氷河時代の生き残り・生きている化石

 カタクリは本来、雪国や寒冷な地域の植物です。夏は酷暑の関東平野周辺に育つのは、じつは不思議な話と聞いて、そうなのかあ・・。以前に解説したことがあります。
 
 
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関東で カタクリが育つ場所の条件

・ 雑木林の林床  光合成をするためには、春先の光が必要。落葉の木の下なら、春早くは光が当たる。
  • 北斜面  夏に日が当たらず、涼しいから
  • 扇形に広がる小さな扇状地のような地形(沖積錘)や、段丘崖の下、地滑り地など・・・土壌が常に地下水で湿っているような場所、つまり夏に気温が高くなったとき、水分が蒸発して熱を奪い、地温が一定以上上がらない。この温度は22℃とのことです

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    小串のカタクリの咲く場所は「段丘崖」です。
    左の写真を見ると、斜面高さを想像していただけるでしょうか。
    すごく立派な段丘で、下仁田まで続いています。高位段丘とよんでいます。

    下仁田では、高速インターを降りたところにアジサイ園がありますが、このアジサイの咲く斜面が段丘崖。
    ちょうど、小串でカタクリが咲いている場所にあたります。

    アジサイ園を登ると、広い平坦面が広がり、こんにゃくや下仁田ネギの畑が続きます。
    小串でも、斜面を上がると、上には畑が広がっています。はじめて見たときは、エーッと少々感激でした。

    
    何の変哲もない畑ですが、じつは、川からかなり
    高いところにある、段丘面です。
    カタクリの斜面を登った所。広々してます。

    もう少し川に近い所にも、平坦面が広がります。少し低い場所で、こちらは低位段丘。
    下仁田でも、R254の走るような場所が低位段丘になります。
     何のことはない、名前は、2段ある平らな面を較べて高いか低いか、という話。
    どちらも昔、川が流れていた、川がつくった平らな地形です。でも、作った時期が違います。どっちが古いと思いますか?  「高い方が古い」です。

    この理屈は、昔、教科書で勉強したことがあったかも・・・そんなの興味も無いし、忘れちゃった、かな普通、そうですよね。説明は・・なんだか面倒なので、割愛しましょう。
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    次に、「湿っているかどうか」

    小串では、水がちょろちょろ湧いています。水のたまり気味のところもあります。写真撮ったけど、なんだかよくわからないので、カット。
     どうして水が湧くか・・・川原だった場所なので、この崖の地層には石ころがゴロゴロ・・そこは水が通りやすい・・・その水が湧いてくる・・と言うわけで、湿っていて、その蒸発作用で夏の暑さが和らぎます。

      東京の国分寺付近には国分寺崖線(がいせん)とよばれる段差があって、そこには湧き水がたくさんあります。"お鷹の道、真姿の池湧水群」など知られ、住民に親しまれているし、かつてのお金持ちの別荘がたてられて、水の豊かな庭園が作られたりしています。ちょっと遠くの有名どころを紹介しました。

    皆さん、近くにカタクリの咲く所やら水の湧くところなんて、ないですか?

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    だんだん、地理の教科書みたいになってきたので、話を変えます。
     
    散策していたら、先生といっしょの小学生たちがワイワイとやってきました。今日は終業式のはずだから、おおかた、キリがついて、やってきたのかな

     



    「 こんにちは」「こんにちは」
    「ここの草刈りやってるの?」「うん、やってるよ」

    すぐ近くには小学校があります(右上写真)
    この小学校では、カタクリの保全活動をやっているそうです。草刈ったり、看板立てたり。もともと、ここに赴任してきた先生がカタクリを見つけ、これは大事なものだからと、雑木林の手入れをはじめ、それが広がって今に至ったのだそうです。
    林の草刈り、雑木の整理をしないと、ササなど生い茂りカタクリは衰退していってしまうというわけ。
    (右写真、網の中は手を加えないようにしていて、ササが生えている)、
     きっと最初はポツポツしかカタクリもなかったのでしょう。


    この日の午後、80歳代の方の家に行く用事がありました。
    「カタクリ見にいってきた、小串っていうところの」といったら、小串がどこだかすぐわかった様子。カタクリの場所も、どこだかわかる様子。「入野小学校ってありますよね。昔、入野村と言ってね」
    なんと、そのあたりからお嫁に来たのだとか。大きな農家にお嫁に来て、もう60年もたったと。
    最近行ってないし、昔、カタクリがあったなんて知らないとか。同居の娘さんに連れて行ってもらって、ぜひごらんになりませんか・・・距離も12km程度。

    私たちの世代は運転免許を持っていて、車も持っていて、自分の好きなときに出かけられるけれど、そんなのはごく最近の話。ずいぶん、活動範囲が広がったものです。
     晴れたうららかな日、故郷のカタクリ、ごらんになったかなあ。




          

    



    
    

     

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