2016年10月4日火曜日

水準点・三角点を見る

 

最近、「地図」を見ましたか?

 地図に接する機会が増えたと思いませんか。
カーナビ、スマホ、グーグルアース・・・・ちょっとボタンを押せば、各地・各種の地図が出てきます。今まで地図にあまり縁のなかった人も、地図が身近になったのかも。どんな地図を見ていますか?
 国土地理院発行の2万5千分の1の地形図は重要な地図ですが、多くの人にとって、あまりなじみがないかも。この地図、以前は登山の人などもけっこう買っていたと思いますが、今、書店でもあまり見かけなくなってきました。ネットから多くの地図・ガイドが入手できるようになりましたからね。
 地図を見るときは「上が北」・・・でも若者は、「上は自分の進行方向」なのでは。常識が変わってきているかもしれない・・・

 日本は世界でみても、古くからきちんと測量が行われた国です。江戸時代、日本地図を作った伊能忠敬には敬意を表したいですが、明治に入ってからも地図作成の努力が続いています。これによって積み重ねられたデータは、貴重な遺産です。
宇宙からも眺め、詳細な地図がつくられる現在でも、いえ、そんな時代だからこそ、地を這うようにして地図をつくった先人の苦労を知ることが大切に思えます。
 前書きが長くなりました。そんなわけで、地形図を見ながらの話。

水準点・三角点

学校で勉強したことがあるはず・・・でも、実際に見たこと、ある?
水準点は全国に16,941、三角点が109,884あるそうで、これだけあったら、近所にもあるかも、と思いませんか。国土地理院発行の2万5千分の1の地形図を見れば場所がわかります。地図記号で、四角の中に●があるのが水準点で、三角の中に●が三角点。
学校の授業で、水準点・三角点の記号を地図の中にさがし、そのあと近所にある実物を探しに行ったことがあります。散歩感覚で楽しかった。

水準点 高さの基準点
主要国道に沿って、約2㎞ごとに設置されたということで、古い歴史のある街では見つかりそう。下の写真は、高崎市倉賀野町の水準点、1等水準点です。倉賀野は宿場町で、また江戸からの水運の最上流の河岸のあった町です。水陸輸送の拠点だったことでしょう。 
なお、1等水準点は群馬に129カ所あるとのこと。近くにありませんか?

JR高崎線倉賀野駅近く 九品寺入口にある
水準点 花崗岩で作られています
倉賀野は中山道の通る町で、中山道巡りかな?といったリュックを背負って歩く人やサイクリングスタイルの人を 時折見かけます。
なお水準点は、現在の道からは少し外れた場所になります。

ところで、この写真、実は20年ほど前のものです。
先日、改めて現地を見て、びっくり!!


右隅の白いプレートに、 「大切にしよう  水準点  国土地理院」 と書かれてあるのが見える

植込みの裏に、水準点がありました


右下の植込みの下を裏に回て見ると、標石が見つかります。
 以前よく目立っていただけに、植込みの下に埋まるような姿は、落差が大きいなあ。壊されてしまった場合もあったようですから、まあ、良しとしましょう。




三角点  位置の基準
三角点は、周囲からよく見える所につくるとのことで、山の上で見たことも何度かありますが、はて、どこで見たっけ?
「位置」というのが具体的にはわかりにくいなあ・・・デジカメに緯度経度が記録できますが、あれを正確に決めていく・・・地道な作業でしょうね。
    写真は藤岡市にある三角点。これも、20年ほど前の写真ですけど。

花こう岩の上に+マーク
藤岡の神社にあります。
 














そういえば、我が家の近くにも三角点マークが・・でも見たことなかった。探しに行きました(近くなのに・・)。
地図で見る限り、田んぼの真ん中。いったいどこに?と、黄金色になりかけた稲穂の揺れる中、ちょっと探しました。
 ありました! お墓の敷地内でした。
 見つけると、なんだかうれしい。
     2等三角点です

 

玉村町の三角点




ものを集めたがるのが人間。ポケモンgoも大人気。
というわけで 、ネット上には、水準点・三角点を探し、写真を撮って公開している人たちがいるの知りました。
何の目的もなくそこらをフラフラするわけにはいかないけれど、なるほどこれなら、地図片手に、大手を振ってどんなところにも行けるよね。なかなか見つからない時もあるし、宝探しの気分も味わえて、楽しいのでは。ほとんどポケモンgoの世界かも(これなら迷惑もかけない)。

最近は電子基準点という、衛星を利用した基準点もつくられているそうで、全国に1300ヶ所あるとのこと。写真で見るまで、どんなものか形も知りませんでした。

 だいぶ昔、水準点を探しに行って、道路に面したその位置に金属製の丸いプレートがあって、「?」と首をかしげたことがありました。金属で代用?でも、金属って温度による伸び縮みも大きいのでは・・・などと思ったり。でも、今はこんなのも多いはずです。主要国道のすぐわきに、花崗岩の石ころのようなものがあったら邪魔にされるでしょうし。
    近所の水準点・三角点、探してみませんか。

原三角点

下仁田には、日本の三角点の起源のといえるようなものが残っています。

原三角点 明治15年10月
明治15年10月〈1882年)設置の三角点です。
 
内務省実施の三角測量でつくられた基準となる三角点
50カ所のひとつです
内務省地理局と記されています
2006年、下仁田自然学校の運営委員の案内で、
        この場所を訪ねました。


測量の仕事はのちに陸地測量部に移りました。新たに事業がはじまり、三角点も設置しなおしたりして、原三角点の標石はほとんど残っていません(残っているのは3カ所だそうです)。場所も動かされたりしています。
そんな中で下仁田のものは動かされることもなく、設置当時そのままの姿で残されています。別の場所に三角点がつくられ、内務省のものは、忘れ去られたようなのです。場所もわからなくなっていました。

この原三角点は探しても見つからずにきましたが、2000年(?)、探し当てられました。
山の高いところにあり、今でこそかなり高くまで道路があり、車までかなりの距離行けますが、当時は山里の低い場所から、この石の塊を、道なき道を担ぎ上げたことでしょう。
  これこそ貴重な文化遺産大切に守っていかねば

みなさん、もしここを訪ねることがあっても、ほんのちょっとでも動かしたりしないでくださいね。「位置」が重要なものなのですから。  
ましてや、傷つけたりは、もってのほかです。


大地の動きの記録  

群馬県内を通る国道17号線は、古くからの重要国道。というわけで、水準点も早くから設置されました。そこで、明治からの記録も残されています。
下図は17号線高崎から三国峠を超えて新潟側への上下の動きのグラフです。100年以上測っているんだ!!
  
下の図はたまたま見た図で、1972年までの記録です。もっと最近のまで入れなさいよと言われそうですが・・国土地理院のHPには生のデータが載っているわけですが、それをまとめるのもかなり大変・・・できるかな・・ 
 というわけで、飯川さんのをご覧ください。ちょっとお勉強的ですが・・・

三国峠付近は10㎝ほどの上昇(上の部分のグラフをご覧ください。横線の上にあれば
上昇、下にあれば沈降です)。三国峠は年間平均1㎜上昇といったところでしょうか。とにかく上昇し続けています。
  山は上昇し続け、平野は沈降しているなどと聞きます。ほんとうだなあ。

飯川健勝 1991年 より
高崎、三国峠、湯沢・・といった地名のある線は、水準点のある場所の標高を描いた図です。
三国は山ですから、高くなっています。

地道な記録の積み上げって、大事な財産ですね。地震の多い日本は、大地の変動も相当ある国です。大地震の後は、地面が上下左右に移動したりします。東北の大地震では相当大きく動いていました。
 

それにしても、緻密な世界。標高を決めるのに、平均海面の高さをゼロにしてというけれど、海には波もあるし、うまく測れるのか、とか、世界各国でのゼロmと日本のゼロmはどう関係づけるのかとか、世界では海面の高さだってでこぼこしているはずなのだから、それはどうなるのかとか、考えるとあれこれ疑問がわいてきます。でも、それを突き詰めたことは無し。こういう緻密な世界とは、どうもちゃんとお付き合いできない・・

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下仁田自然史館の展示室
 
物を手に取って、「ためしてみよう」というコーナーがあります。
下写真は、「磁石にくっつく?くっつかない?」で、ほとんど同じに見える黒い石2種類が置いてあります。頁岩と緻密な玄武岩で、ぶら下げた磁石に、玄武岩は見事にくっつきます。そのほかの石もありますから、くっつくかどうか、ためしてみませんか。
ためしてみるコーナーがいくつかあったら、見学者の感想に、
   「触ってためす場所には同じマークを置いたらどうでしょうか」と。
そうですね!さっそく写真のようなかわいいキャラクターが「ためしてみよう」と呼びかけることになりました。
みなさん、ご意見、どしどしお寄せ下さい。




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