2021年6月22日火曜日

オオコオイムシ  うどんげの花

梅雨に入り ました。

虫たちの季節がやってきます。


 たまごを背中に載せているこの虫は、なに?

オオコオイムシといいます。

背中の卵は数えたら、91個ありました。頭のあたりにある卵、孵化し始めていますね。

  端っこに見えるスケールは、
  1目盛りが1mm

  下の写真は3齢幼虫です。


ここは山の湿地で、水でびちゃびちゃした場所に、2齢と3齢の子どもが何匹も。探したら、卵を載せた成虫も。
卵を背負っているのはオスだそうです。

昔はあちこちいたようですが、今は群馬県では絶滅危惧種の仲間入りです。
 姿を見た場所には、10年前にはたくさんいて、調査に来た人も大喜びでしたが、その後どんどん減っていって、最近はほとんど姿を見なくなっていました。水の流れの一部が変わって、湿地の水が減少していました。
2年ほど前から水の流れを少しづつ戻していったら、オオコオイムシも戻ってきたのです。

水辺の生きものは、日本中どこでも減少しています。住む場所がなくなっているのですから無理もない。「たかが虫」ですけれど、大切にしたいです。
 
左写真、真ん中の白いものは何でしょう。泡の塊・中にいくつもの卵が入っています。
この泡は必ず、水のたまった上にあります。なぜって、この泡はカエルの卵が中に入っていて、帰ったオタマジャクシは、ポタリポタリと、下の水に落ちるから。

 これはモリアオガエルの卵塊。これも群馬では準絶滅危惧種です。

            カエルの声が盛んに聞こえ、産卵最盛期はこれから。


山道を歩けば、こんな丸まった葉っぱが。
オトシブミです。中に昆虫の卵が入っています。
よくまあ、こんなに上手に葉を丸めるものです。
 いいネーミングですね。
そこらの公園などにも落ちているかもしれませんよ。
ひらひらと川原に飛んできたのは、きれいなチョウ。
ミヤマカラスゲハです。 黒みがかった羽がメタリックに輝くようでした。

山に行かねばならない、と思ている方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。

次は我家の網戸にくっついていたもの です。
みたことありませんか? ウドンゲの花。
これも虫の卵です。

クサカゲロウという、ひらひらと頼りなげに飛んでくる
色もうす緑ではかなそうな虫のものです。
むかし、網戸のなかったころ、家の中の電灯のコードにくっつていたものです。

こんなところにくっついても、孵化した幼虫は生き延びられないだろうな。でも、孵化した様子なんて、見たことない。

「いつでもどこでも 自然観察」と言っていた人がいました。
 通勤途中の道端の植え込み、ふっと見上げた空の雲。早朝の露、夕焼けの色。
 そんな、好奇心に満ちた子どものような心を失わずにいたら、コロナ禍の中でも、
 心がいやされるかもしれません。
我が家の庭でも、思い起こせばトックリバチの巣があったり、丸く切り取られた葉っぱを見つけたり(ハキリバチかな?)、ズルズルとクモを引きずっていくハチを見たり、昆虫のことはあまり知らない私でも、気づくものはあります。子供は目線が低いから、小さな虫に目が届きやすいのかもしれませんね。
自然は、たくさんの情報を抱えています。探してみませんか。
 ちょっとした山の林で見たものを列挙しましょう。

コアジサイの花 和風のいい花です!

ギンリョウソウ
葉緑体を持っていません
ギンリョウソウ 




光合成できません
腐生植物

ゆうれいそうともいうとか。
それはないよと 言いたくなります。
タニウツギ 山の中の木の花とも思えないような
華やかな色です


ハナイカダ 5月の頃で まだつぼみ
雄株と雌株があります
             
身近にも、きっといろいろな自然がありますよ。
自分の五感を豊かにするのにも、いい季節だと思います。
コロナだから外に出るな・・・・人込みは避けましょうね。
正岡子規だって、寝たきりでもいろいろ観察したのですから。

2021年6月15日火曜日

梅雨の前の仕事  サイカチの木

梅雨時 梅仕事

  梅雨から梅雨頃、昔の農家の主婦はこまごまとした仕事で何かと忙しかった・・・いや、いつも忙しかったけれど・・・

群馬の南部、平野部では、冬の間麦を育て、梅雨前が刈り取りシーズンです。我が家の周辺は、毎年、刈り取り前の麦畑が「麦秋」の姿を見せてくれます。  

 何を今頃、と言われそうですが、麦秋の麦畑(5月9日)と刈り取り後の姿(6月9日)の麦畑を紹介しましょう。風に揺れ波打つ麦の穂は、何とも気持ちのいいものです。
私としては、緑の穂の頃が一番好きですが。

  



一部 麦が残っています
刈り取り後の麦わらは、昔はお風呂を焚く燃料になったりもしました。
麦わらで葺いた屋根もあったし。私も麦わら屋根の家で育ちました。
分厚い麦わらのおかげで、夏は涼しかったですね。
今は、麦わらは収穫時に粉々にして、すき混むのが多いようです。
写真手前のように、小さな束にする機械もあり、そんなのをもらってきて
地這いキュウリの下に敷いたり、その他大事にしたいものの株際に
敷きました。カラカラに乾いた時には、枯れるのを防いでもくれます。













 このころは、ビワも実ります
 梅雨の前に麦を刈り、畑のラッキョウを掘り上げて
ラッキョウを漬け、梅の実を落として梅干しを漬け・・雑草も生い茂り、木の枝もモソモソと茂り、放っておけない…と、まあ、いろいろ忙しい。

 子供のころ、私もラッキョウをほって洗って根を切り落とし、漬ける準備を手伝ったり・・それが、まあ、何㎏も。ほぼ一日がかりで漬け込んだものです。そんなに食べるわけじゃないのだから、おおかたはみんなにあげるのですが。

梅は、私は今は梅ジュース、梅サワー、梅ジャム、梅酢味噌と、要するに洗って砂糖やら何やらを一緒に入れておけばいい、手間のかからないものを作るだけ。でも、 これがとても役に立つ。何もそんなことしなくたって,買えばいいと言われそうですが。
 
 製品を買えばけっこう高いものになるし、そこらになっている梅でつくればいいし(梅はタダでもらったり)、と、毎年あれこれ作るわけです。最近はいろいろなレシピが、ネットでも新聞でもあちこちに載っているし、今年はこれ作ってみようかな、などと、他のレシピを見たりしているところです。
 子供の頃、母や祖母にいろいろ手伝わされたのが、こんな時、億劫がらずに自分で作る気になるおおもとなのかもしれないと、親たちに少し感謝しているところです。

 いつまでも、「これ作ってみようかな」などと実験気分でやれますように。
 それには体力もつけて、面白がる気持ちも忘れずに、毎日を送れることが大切・・・
  まったく、年寄の言うせりふになってきました。

サイカチ調査

サイカチの木って知っていますか?
群馬県のレッドデータの絶滅危惧Ⅰ類に登録されている木です。
 普通、絶滅危惧種がどこに生えているなんて公表しません。きれいな花などなら、掘り取られてしまうから。趣味の人、販売目的の業者と、いろいろな人がいます。どこにも困った人たちがいるのです。
 ですが、サイカチは、あまり採る気はしないだろうな。なぜって、幹はトゲトゲだし、大きい木だから。それが私の家の近く、川原にたくさんはえているのです。
ですから、紹介します。
こんなトゲ 

クモの巣もいっぱい



 
        
大木になります



















 大変成長の遅い木とのこと
 この大きさまで育つのにはどれだけかかるのか。
上流の支流わきの群馬の森公園にサイカチがあります。
その種が流れてきて育ったのかなと思ったのですが、群馬の森公園のサイカチの方が、ここより小さい。ですから、親ではなさそうです。

 一昨年の台風19号では、ここは木も根こそぎになったりしています。
今年春に数えて19本あったのですが、今回は服にくっつく「やぶじらみ」をかき分け、藪にも入り、数えました。
今回は樹高1mほどのも入れて、49本!(今まで知らなかった少し離れた場所で見つけたのが12本あります)
その他に、芽生えと小さなもの多数。サイカチに住みやすい場所なのでしょうね。
          
双葉が見えます。芽生えたばかり。右端にある豆のサヤがサイカチの実

右は今年より何年か前に芽生えたサイカチ。
すごく成長が遅いのだとか。
今回はレッドデータ調査の担当者と国土交通省の職員の調査でした。
世代交代しているのかどうかを確かめたいとのことで、芽生えはたくさん見つかり、大満足。この場所で世代交代しているのですね。

 洪水の多発で、国交省は川原の掘り下げや、川原に生えた木の伐採工事を進めています。
その時、保存するべき木として、確認をするための調査でした。

みなさんの身近にも、この木、ありませんか。
誰でもすぐ見分けられる木です。
マメ科の木ですが、花はちょっと違った感じです。

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 サイカチの木は宮沢賢治の「風の又三郎」に出てきます。それで、名前だけはなんとなく
おぼえていたのだと思います。どんな木だろうとわけ思ったわけです。
河原のでこぼこ道を自転車で走っていた時,トゲトゲの木に気づいて サイカチとわかりました。
ある時、群馬県のレッドデータ種の表を見ていて、サイカチがあるのに気づいたというわけです。群馬以外では、いくつかの県がレッドデータ登録しています。

 風の又三郎には、サイカチ、ヤナギ、ねむの木など、川原に生える木の名前が出てきています。川に飛び込んで遊ぶ話のなかで書かれていました。

「…右の方からも一つの谷川が入ってきて少し広い川原になり、そのすぐ下流は大きなさいかちの木の生えた崖になっているのでした」
「・・・また上流のさいかちの木へ登り始めました。ほんとに暑くて・・」

サイカチの木に登る??   
玉村のサイカチ、滝川という川が烏川に合流したそのすぐ下流で広い河原になってるところ。これは同じだなア・・・

 風の又三郎のページをめくりながら、考えていました。
玉村小学校の校庭には、大きなサイカチがあります。もしかしたら風の又三郎を読んでこの木を植えた植物好きの先生がいたのではないか・・・・
私は玉村小学校出身ではありませんが、私には「タバコの葉の栽培では葉の数まで数えて」などという話をした先生がいました。「えーっ」と思ったわけです。
風の又三郎に「専売局で、この葉一枚ずつ数えで帳面さつけでるだ」という文がでてきて、これを話してくれたんだなと思ったことがあります。その頃、先生たちは自主研究のような事に取り組んだり、いろいろなこと自由にやっていましたし。いっしょに宮沢賢治を読んで、授業研究していた人が結構いたのではないかと思うわけです。
もう数十年も前のことです。

 だが待てよ、あのサイカチ、ずいぶん大きいよね。だいぶ前に植えたと思うけれど・・・
 玉村小学校では、学級通信の名前が「さいかち」だった人もいたし、通知表の名前が,「さいかち」だったとかいきいたことがあったけど・・・いずれにしても、あのトゲトゲ、なぜか愛されてきたわけでしょう。

子どもの頃は宮沢賢治の童話、何が面白いのかわからなかったのですけどね。
 貧しかったけれど、何だか懐かしいものを渡してくれた人たちに、感謝の思いです。