2021年3月26日金曜日

桜咲くころ 近所・里山に行きませんか

ソメイヨシノの咲く季節になりました。

 ソメイヨシノの咲く少し前のころ、丘陵や低い山の付近に行くと、まだ葉の出ない木々の中に、ほんのり薄ピンクの桜の木がぽつぽつと見えます。エドヒガンとよばれます。山に春を呼んでくれる女神のような上品さを感じます。



 ソメイヨシノの片親とのことで、葉の出る前に花をつけます。ソメイヨシノはこの親の性質を受け継いでいるのでしょう。

 写真では、手前は園芸品種かと思いますが、山の中の木は自然のままのエドヒガンでしょうか。大きな木にもなり、寿命も長いとのこと。
 サクラには多くの品種がありますが、ドヒガンが親の品種もたくさんあるようです。子供にあたるソメイヨシノは寿命の短い木ですね。

 最近、公園や道路際で早春から目立つ姿を見せてくれるのは河津サクラですが、これは人が植えたものです。満開のソメイヨシノの華やかさの前に、近くの山でほんのりと温さを伝えてくれる桜にも、気づいていただけましたら。なんだかほっとする、里山の姿です。

 今年はコロナで、花見も控えてほしい状況です。公園やサクラの名所は行かない方がよいでしょうが、こうした自然の中、近隣の里山には、ほっとするような桜の姿があちこちにあります。人もほとんどいません。飲めや歌えはまずいですが、静かに味わう花見はいかがでしょう。
 他の花も少し紹介しましょう。


これは我が家の近く、烏川の堤防の内側の公園。数年前の写真。
 草が茂って、何だか物騒な感じだになっていたものを、住民がきれいにしようと定期的に集まり、整備をはじめた場所です。



 河川敷に木が茂っていたので下草を刈ったら、こんなにきれいになりました。花は自然に生えたものです。
 紫は、ムラサキハナナ(花だけ拡大したものも載せました)。
 黄色は菜の花、畑から逃げ出した出ものが、堤防や河川敷にたくさん咲きます。
 ちょっとした川などあったら、こんな花が自然に咲いているかもしれません。ソメイヨシノも咲いています。これは昔、植えたものでしょう。

ムラサキハナナについて少し解説。
 ショカッサイとも、オオアラセイトウとも言います。
オオアラセイトウ…どんな花だろうと思っていたことがありました。スウェーデンの児童文学「名探偵カッレくん」シリーズの一節に登場していました。「長靴下のピッピちゃん」を書いた作家です。かなり緯度の高い北国スウェーデンでは、夏は白夜に近く、夜遅くまで明るい日が続きます。そんな夏に子供たちが家を抜け出して夜まで活発に活動しまくるのですが、その中に「オオアラセイトウの花の咲き誇る」といった感じの情景がありました。名前が何だか素敵で、どんな花だろうと思ったものです。ずっと後になって、この花だと知りました。
 でも、昔からこんなにたくさん見かけたわけではありません。もう50年ほども前、大学受験で東京に行った時、試験会場の外に沈丁花の花が香り、その下に見かけたことのない紫の花が咲いていて、その優しい色に心をいやされたのを思い出せます。これがムラサキハナナでした。今は園芸用の種子も売っていますが、とにかく野外で広がり、今では写真のような状況です。外来種というわけです。原産地は中国と書かれてありました。戦争中、中国大陸に渡った兵士で、この花に慰められ、種を持ち帰った人がいたという話を聞いたこともあります。外来種の増殖は、地域の生態系を崩しかねないので好ましくはないのですが、この花、日本の自然を壊さずにしっくり馴染んでくれたらと願います。


近くの里山で見かけた花を紹介しましょう。
あと1週間もすると、野山は花盛りになります
アズマイチゲ



ニリンソウ





こんな里山の道端や石垣、空き地に 小さな花が咲きだしています。
標高400 ~500mほどの 藤岡の里山です。

 スミレも咲きだしていました。白いマルバスミレなどです。農家の庭先には、昔周囲の山で採取したというシュンランも咲いていました。野草が大好きとおっしゃっていました。。この植物、昔は当たり前にたくさんあったようですが、今どきは山で見ることも稀・・・。そういえば、かつてエビネブームがあった時、高崎観音山の周囲では、たくさんあったエビネがすっかりきえてしまったといいます。多くの美しい花の植物は、とにかく、保護が必要になってしまっています。



もう少し標高の高い場所に行くと、まだ草花は目立ちませんが、キブシ、アブラチャン、ダンコウバイの黄色い花が、木の枝をうめていました。


 家は下仁田町の山間に見られる平原(へばら)集落。かつては山での仕事で生計が立てられ、各地にこうした集落があり、たくさんの人が住んでいました。また、峠道を伝って人が徒歩や馬で移動していたわけで、こうした集落は大切な役割を果たしていたはずです。
 自動車の利用が普通になったのなんて、ほんの最近のこと。私でさえ、まさか、自分が車を運転して、あちこち出かけるなど、思いもしませんでした。
 こうした山道を歩いていた人たちは、本当に足腰が丈夫で、動くことをいとわず、一緒に歩くと、わが身のなまくらさを感じてしまったものです。
 写真を撮った場所は、最近まで3件の家があったそうですが、今は1軒だけで一人のかたがおすまいとのこと。人なつこい犬が出迎えてくれました。急斜面の続く地域に、きれいに手入れされた家と庭・畑があり、ハクモクレンやサクラがきれいに咲いていました。お住まいの方は働き者なのですね。

道端に植えられた花
トサミズキ
   

キブシ  金色の鎖がたくさん下がっていました

ダンコウバイ
ミヤマキケマン

木に咲く自生の黄色い花は、キブシ、アブラチャン、ダンコウバイなどです。
春、真っ先に木々を彩ります。  
これからの季節、ぜひ野山に親しんでほしいです。

アズマイチゲ


2021年3月17日水曜日

ハクモクレンの花 早春です

 東京では3月14日に桜が咲いたとか。満開の桜の下で入学式、と言っていたのはいつのことだったろうか。ますます春の訪れが早くなってくる・・・

サクラに負けない美しさで、ハクモクレンが咲ています。

 古い農家の家の前に、のびのび育っています。いいなあ。
だんだん大きくなったつぼみは、一斉に北方向に曲がっていました。それもかわいいのですが、咲いた時はきれいですね。冷え込みで茶色くなってしまうこともありますが。


我が家の小学校区にある木です。
最近は、ほぼ毎年、花の頃見ています。自転車で数分の所ですから。
大木で育っていてほしいけれど、邪魔にされて切られてしまうこともあるだろうなあ。

これから山に行ったら、コブシが白く咲くだろうなあ。


相変わらずネコは 

木登りです。












同じ日、我が家から18㎞先の里山は、まだ梅が満開でした。

下の写真です


こちらは何をしているのでしょうか。下仁田町の道端です。

シイタケ栽培の準備です。切りそろえられた木の幹の白い点々は、植え付けられたシイタケ菌です。

こんな光景、見たことなかったので「写真撮らせてもらっていいですか~」と聞いたら、明るい声で
「どうぞどうぞ、今お茶の時間になるから、一緒に飲んでいきなよ」
図々しくもごちそうになりました。
 晴れて気持ちのいい日、なんだか、歌の一節が浮かんできました。「おお牧場はみどり」
その2番だったか3番だったかです。小学校か中学校で歌ったのではないかな。NHKの番組、「みんなのうた」で放送していたかもしれない。

 ”♬♬ ああ仕事はゆかい 山のようにつみ上げろ ああ仕事はゆかい 晴れた空のもと
  雪が溶けて川となって 山をくだり 谷をはしる 野を横切り 畑をうるおし 呼びかけるよ私に ♬ ”

腰をかがめて重い木を持ち上げたりで、疲れるに違い何ないででしょうが、でも、明るい空、何人かの人たちが明るい声で笑いながらおしゃべりする姿に、ふと心が軽くなりました。

もう何十年も歌ったことのない歌、歌詞は間違っていなかったかなと確かめると、ちょっと違っていました。最後の「晴れた空のもと」は、2番の歌詞で、この歌詞は3番で「みな冬のためだ」。
でも、「晴れた空のもと」の方が、この日にはぴったりです。
 それにしても、子どもの頃歌った歌って、忘れないものです。年寄りの思い出話と言われるなあと思いつつ、子どもの頃の記憶って、楽しい記憶をたくさん持っていたら、人生の宝ものになるなあ、とも思うのです。ほんのちょっとしたことだったりしても、うれしいもの。

 アニメの名作と言われた「アルプスの少女ハイジ」、ご覧になった方もいらっしゃるでしょうか。ずいぶん前に見たアニメの一場面が心に残っています。
おおきなモミの木の下で嬉しそうに見上げるハイジの頭上、幾重にも重なった枝が大きく揺れ、ゴウゴウと音を立てている・・・
その音・その動き、そういえば昔、大きな木の枝が風に大きく揺れるようすを、いいなあとながめたものです。我が家の裏の竹やぶの中の大きなケヤキだったと思います。いや、竹そのものだたのかもしれない。そのようすは、なんだか魅力がありました。心をひきつけるものがありました。ハイジの気持ちが手に取るようにわかるのです。同じように感じた人がいるんだなあとうれしくなり、同時にそうれをこうして表現していることを素晴らしいと思いました。
そういえば宮沢賢治の「風の又三郎」も強い風の描写から始まっていました。

群馬は空っ風で有名でした。家の北側や西側には竹やぶや樫ぐねがありました。
風を防ぐ防風林です。竹は同時にカゴなど養蚕道具を作る材料にもなりました。
強い風が吹くと、その竹や木が大きく揺れ、ゴウゴウと音を立てました。
そんな風土で育ったんだなあ、と、あらためて気づいたものです。

 こんな歌がありました

   だれが風を見たでしょ
   ぼくもあなたも見やしない
   けれど木の葉をふるわせて
   風はとおりぬけてゆく        

今日はこんな優雅ではない、強い風が吹いています。もう少しすると、青葉を揺らす薫風の季節もやってくるのですね。 その前に、種まきをしなくちゃ、です。

2021年3月11日木曜日

春の庭先 生き物が目立ってくるころ


 群馬の荒船山の近く、兜岩山の付近で採集されていた昆虫化石から、日本発のホタル科化石が発見されたこと、お知らせしました。

採集されたのは、この地域で先生をされていた人、仲良しの3名がいました。お二人は亡くなっておられます。ご健在の堀越さんを、展示した下仁田自然史館にお連れしました。ホタルを採集されていた茂木さんの奥様も来られ、お友達も一緒に、見学されました。とても楽しそうでした。
こうして皆さんに喜んでいただけて、うれしい話です。化石採集地は南牧村、その隣が下仁田町です。こうして地域の資料を、地域できちんと保管していくのは、地元の宝物を大切にする気持ちにつながるでしょう。故郷を大切にする気持ちにつながるかもしれません。

 春めいてきました。  植物も動物も、活動を始めます。

庭の一角の、人が踏みつけるような土に、何やらたくさんの穴が。
 いったい誰があけた・・・?

拡大してみます。
 どこかで見たことある?


昔、農家の家の前には広い土の庭が広がっていました。ここにムシロを広げて、コメや麦、豆などを干したりしました。
農作業に必要なスペースでした。
その固まった土に、丸い穴があいていて、ニラの葉っぱなどを差し込むと、動くのです。何かがいる!でも何だか知らないままでした。ずっと後、どうやらハンミョウらしい、と知りました。
でも、その穴には盛り上がった土くれなんてなかったはず。
  では、これは何?

ミミズ、と思い浮かんだのですが、こんな栄養分のなさそうな土に、こんないっぱい寄ってくるのだろうか…と。 
 昨年まではここには、はげちょろの芝生がありました。洗濯物を干すのに、落ちても汚れが少ないように植えたものが広がった場所です。
そこに昨年、アゲラタムという50㎝程になる草花がはえて、なんとなくそのままにしておいたら、芝が消えてしまったという場所。よく見ると、芝生の中にもこんな土くれがいくつか見えました。ミミズでいいかなあ。
 すぐ目の前にも、いろいろ気づくものはあるものです。いつでもどこでも、自然観察、
これって楽しいですよ。
 でもネットで調べたら、「庭の土の穴」というだけで、「何かいる、気持ち悪い!」とかいった反応がでてくるような・・・  そういえば、子どもたち、部屋に飛んできた虫に大騒ぎするなあ。身の回りにはペット以外の生きものがいるのは嫌な子が多いのか・・・。
  そういう感覚、変えてもらいたいです。いろいろな生き物が一緒に生きているのがこの地球の世界。命溢れる地球、とまで言わなくても、身近な生き物を受け入れてほしいですね。

    10月には両手にちょこんと載るくらい小さかった、畑の隅でふるえていた子猫。5ヶ月でこんなに大きくなりました。 かわいらしさは少々減ったけど。                                                 

まわりに田んぼや畑がいっぱいの地方の町でも、「猫は家の中で飼いましょう」と、町の広報に書いてある。でもぴょんぴょん飛び跳ねて、ダッシュで走りまわって、木に昇り降り、このエネルギーは外で走りまわらなければ発散できそうもない。

 こんなた猫たちがかわいいのは、信じきってくれるからなのでは。
「この人どんな人間か」「何考えてるか」「あれこれめんどうくさいな」なんて、考える必要ない。ご飯あげて撫でてあげるだけなのだけれど。子供がお母さんに寄ってくるように、とにかく、なついてくれる。 

 以前同じ職場にいた人がこんなことを言いました。「先生がね、○○ちゃんはいい子なんだけどねえ・・」(成績がちょっと・・という意味)。「だから私言ったの。『先生、できの悪い子ほどかわいいっていうじゃないですか』」。
 出来不出来の評価の目で子供を見ていたら、子どももトゲトゲし、ギスギスした世の中になりますよね。いつも評価されて、競争させられていては、やってられない。

 生きていてくれるだけでいい・・・今日は3月11日、東北大震災の日、そんな思いを味わった人がどんなにたくさんいただろうか。

我が家の猫も、仲良く、楽しく長生きしたいね。




2021年3月3日水曜日

川原のサイカチ と 河川改修

 コロナで外出も控える・・・でも、田舎では外は人のいない所がたくさんあり、散歩にうってつけの場所もあります。利根川の堤防もそんな場所の一つ。

堤防から見た近所の川に、今年は白鳥が5羽、居ついています。そろそろ北へ飛び立つのでしょうか。
ちゃんとカメラ持っていけばよかったのに‥と思いつつ、遠くに何とか白い鳥が写っているのを紹介。お恥ずかしいですが・・
我が家から1㎞少々の所なんですが・・・

ところで、今、玉村町から下流へ、利根川では大規模な河床掘削が行われています。堤防の補強も。もう1年以上も続き、まだまだ続くとのことです。

利根川の川岸から中洲までとにかく一面に土砂をとっています。掘り取る厚さを見てください!背景の水の所は、昨年大々的に土砂をとったところです。
なぜ? 増水した時、堤防内になるべくたくさんの水が流れるようにし、堤防から溢れないように。要するに、洪水を防ぐため。

     下写真は、堤防強化の工事。


 ↑河川敷にはたくさんの木や竹の高い草(オギなど)が生えていましたが、全部伐採。
これから、土砂の撤去を行うはずです。

伐採後に、水を制御するための工夫の木の枠組みが見えていて、へえ~と思いました。
これらすべて、我が家から徒歩で行く範囲の光景です。

この付近で高崎の町を流れてくる烏川が利根川に合流します。その烏川も川の掘削等の工事が始まっています。
最近の大雨洪水被害の多発を受けてか、国土強靭化政策として、かなり多額の予算がつけられてきています。

それにしても、どうやって川を制御するかは、はるか昔からの課題でしょう。
多額のお金が関わる話で、その利権に群がるようなことで政策がすすめられることのないようにと、思わずにはいられません。


ところで、この付近の烏川の川原には、県の絶滅危惧種に指定されている木が生えています。サイカチです。
写真のような、あきれるほどのトゲだらけの木です。幹のあちこちに塊になって生えています。
写真には2本写っていますが、この付近には大きな木も何本か育っています。

         若い木のサイカチの幹のトゲ
絶滅危惧種の調査保全活動をしている方からうかがった話では
*種子をまいて、7年でやっと15㎝ほど
*挿し木をして、5年で1.5mほど 育ったそうです

 育つのに結構時間がかかりそうな。この大きな木はどれくらいの年齢なのでしょうか。
サイカチをを伐採しないようにと、河川課には連絡がされています。

林の左にぽつんと立つ2本もサイカチです。2019年の台風19号の前までは、この付近まで林になっていました。右の林の中にサイカチがたくさんはえています。


  
玉村小学校の校庭には大きなサイカチの木があります。いったい誰がこんなトゲトゲの木を植えたのだろうか?
宮沢賢治の童話「風の又三郎」に、川辺にはえるサイカチが出てきます。もしかして、宮沢賢治を好きな先生がいて、見つけたサイカチを植えたのでは・・などと、想像たくましくしています。
この学校で先生をしていた方が、ご自宅にサイカチを植えていました。どうして植えたのか、お聞きしておけばよかった。ご存命なら、100歳ほどの方でした。

そうか、サイカチは川辺が好きなんだ、と、あらためて気づきました。賢治はきっと、木の性質もよく知っていたのでしょうね。

今、川原はショベルカーとダンプカーの走りまわる場所です。
以前、ここではカヤネズミの巣を見たことがあります。
オギの葉を細く割いて、球形の巣を作り、子育てするのです。小さな小さなネズミです。
     カヤネズミの巣

こうした生きものたち、洪水の中などを生き延びてきたわけですから、どこかで生きていてくれるのを願っています。

この付近ではサケの産卵も見られるとのこと。こうした生きものにも目を向けるようになったのは、比較的最近の話です。
尾瀬の自然保護を言った時、開発の邪魔をするなと「コケと人とどっちが大切か」と批判され、自然保護を訴える人は大変な思いをしてきました。
世界中で生き物が減り、絶滅し、というのは、今の方が深刻でしょう。
時には野生の生きものにも心を向けてみていただけたらと思います。