川原の石の展示解説をするとき、ふっと思いました。
「そうだ、三波川結晶片岩の石ころのいっぱいある川原を入れよう。結晶片岩はきれいだし、日本中どこにでもあるという石ではないし、だいいち、地質学でつかう三波川帯とか、三波川結晶片岩とかの名前は、群馬県南部にある小さな川・三波川からついたのだから」
藤岡市上落合付近にて、もうじき鏑川に合流します |
藤岡市と高崎市の境界付近で鏑川に合流する川です。
どんな種類の石が多そうですか? |
石の種類を調べると、三波川結晶片岩と、変成の度合いの弱いミカブ緑色岩の2種類で、なんと80%ほども占めます!
結晶片岩の分布する場所へ行っても、道ばたにある石は風化でボロボロして色もあまり鮮やかでなかったり・・なんの石かもわかりにくいことも・・・とはいえ地質調査ではどこにどんな石がどんなふうに分布しているかが決定的に重要です。ですから、記録解説するときも、必ず現地の「石」をつかいます。川原の石なんかで、あれこれ言うことはあまりないでしょう。
白い点々・点紋が入っています |
これらは三波川結晶片岩です。
平らな面・片理が発達。
それがこまかく褶曲しているものもあります。
左写真では片理に沿って、粉のように白くキラキラしています。
変成作用で、小さな白雲母、絹雲母がたくさんできているわけです。
緑色岩 |
結晶片岩の解説を見れば、「点紋の入ったのは変成の度合いが高め」とか、「変成前の、もとの岩石は何か」とか、「この色は何の色か」など、いろいろ難しい話がでてきます。
以前に,調べながら解説を書いてみたことがあります。
結晶片岩
地層に見られる平らな面 片理 ・へきかい
一緒に転がっている石の中に、やけに黒っぽかったり、表面が赤さび色に見えたりする石がありました。これって、以前に下仁田の川原で見た石に少し似ているのでは・・・黒内山の石、かんらん岩に・・・・蛇紋岩のような石も見かけた・・・。とはいえ少々確信がなくて・・・それほどあちこちにある石ではないでしょうから・・・・こんな石が、調べた場所では5%ほどの個数ありました。
そこで、鮎川の上流の地質を調べてみることにしました。地質図を見たわけです。
地形図なら国土地理院の地形図があります。日本全国の2万5千分の1地形図が市販され、国土地理院のホームページからも見ることができます。(最近はこの地形図を買う人が減り、店頭に置く店も減って、必要な人も、ネットで見るのが増えているかも)
蛇紋岩? |
地形図といってもあまり見ていないでしょうが、地質図は,さらに見たこともないものでしょう。どこで手に入れるかもまるっきりわからない。
でも今はこれもネット上で見ることができます。
産業総合研究所(産総研)のHPで日本シームレス地質図という名称のものを公開しています。地形図の等高線と重ねて,地質の分布が色分けされてあります。
これで見ると、鮎川を少しさかのぼると、川の近くに「超苦鉄質岩類(超塩基性岩:蛇紋岩:オフィオライト)」という部分が点々と,紫色に塗られていました。やっぱりあった!
超苦鉄質岩って、かんらん岩とか蛇紋岩のような石の仲間のことです。超塩基性岩などとも言います。この場所の石が川原の石になって転がっているに違いない、と私は思ったのです。
超苦鉄質岩って、かんらん岩とか蛇紋岩のような石の仲間のことです。超塩基性岩などとも言います。この場所の石が川原の石になって転がっているに違いない、と私は思ったのです。
この地質図をそのままここに載せるわけにはいきませんので、以前につくった簡単な図を下にのせます。鮎川の流路はちょっといい加減なのですが、川のはじまりと最後の位置はだいたい図の位置になるかと思います。
星印が川原の石を調べた場所です。
ご覧いただいてわかるように、鮎川はほぼ緑色に塗った三波川結晶片岩分布地域を流れ
下っています。 スタートは秩父帯にあり、川原の石の中にチャートが少し含まれているのにも納得。
超苦鉄質岩の岩体は、地図上の川の名前で”三波川”と書かれた上あたりに,点々と見られます。あらためて、「川原の石は上流の様子を語るなあ・・」と思った次第です。
「三波川結晶片岩」の名前は、もちろん、地図にある
「三波川」からつきました。
この川の付近で、この結晶片岩が最初に研究されたから。
チャート |
超苦鉄質岩の岩体は、地図上の川の名前で”三波川”と書かれた上あたりに,点々と見られます。あらためて、「川原の石は上流の様子を語るなあ・・」と思った次第です。
「三波川結晶片岩」の名前は、もちろん、地図にある
「三波川」からつきました。
この川の付近で、この結晶片岩が最初に研究されたから。
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ところで、産総研のシームレス地質図を見ると、鮎川のまわりはおおかた「三波川変成岩類の泥質片岩(点紋帯)」です。
ところが下仁田付近は「三波川帯」になっていません。もともと,下仁田付近や三波石峡あたりの岩石は,変成の弱い御荷鉾緑色岩類とよばれていました。シームレス地質図では「御荷鉾緑色岩」といった名称も見当たりませんでした。そして、この地質図では、その部分は「ジュラ紀苦鉄質火山岩類(付加体コンプレックス中の岩体)」と書かれてあります・・・・・・
研究が進む中で、いろいろ解明もされ、解釈も変化してくるわけです。地質図も変わってくるし,呼び名も変わったり、人によっては違った説も図もできてきます・・・
私たち素人は何といってよいか・・まだまだわからないことがたくさんある世界なのだなあ、と・・・
とはいえ、この地域の変成をうけた岩石の説明は、「三波川帯」という言葉で教科書でも普通にのっています。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
山里でも、苗を植えた田んぼが見られる季節になりました。写真は みなかみ町。
今はさわやかな初夏、
今年はもう、30℃を超える日があって、びっくりですが。
自然に親しみたいですね。
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