2017年7月17日月曜日

高低差をうまく利用 石灰工場の立地と乾燥施設

石灰岩の山、知恵を絞ってうまく利用しました
下仁田青倉の石灰岩の崖
以前は採掘していました

下仁田町の自然史館を少し南に行くと、石灰岩の白い岩山が見えてきます。

 石灰岩は利用価値が高く、ここの石灰岩についても、1659年の記録があるそうです。江戸時代から掘られてきたわけです。

青倉の鍾乳石
このあたりにお住まいの方に、石灰岩から生まれる鍾乳石を見せていただきました。
 石灰岩はゆっくりと水に溶かされ、その水がぽたぽた滴るとき、ふたたび石灰分が沈着し、つららのような「石」ができます。ですから、石灰岩の中にできた空洞、鍾乳洞に見つかり、大規模なところは観光地になっていますね。
 ここ青倉にも、鍾乳石が育っていたわけで、採掘の折、見つかることもあったわけでしょう。こんなのがぶら下がっていたと思うと、わくわくします。

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 ところで、この場所・青倉には、石灰に関係した工場があります。白石工業白艶華工場という1932年(昭和7年)第1期工事竣工という長い歴史を持つ会社で、自力で開発した技術で石灰石から細粒の炭酸カルシウムを製造しています。青倉の石灰石は、良質でした。今は原料の石灰石の採掘はやめたので、秩父から運んでいるとのことです。

白石工業 右端に石灰の崖、昔の乾燥施設が見られる 

 左写真の山の斜面の上から下へ造られている施設が工場。
何の変哲も無いのですが、実はここに知恵を凝らした工夫があるのを知りました。
 ちょっと紹介。

石灰石を採掘した場所は工場の上の山にありました。 
材料は、上から下へおろす。
自然の重力を利用・・合理的。

写真右端に白い崖・・これも石灰岩の崖です。写真に写る右端の場所で掘ったものは、ワイヤーを張って、かごに入れ、運んでいたとか。施設跡が少し残っています。


  • 山頂で原料を集める → 山腹で製品化 → 山麓から搬出  
      でもこれだけではありません。
  • 土地の高低差を利用しての水力発電。動力として、自力での発電を行っていました。
     下仁田は水車の力を使ってこんにゃく製粉を行っていましたが、
     同じ水力をこうして利用してもいたわけです。
  • この地域の気候を利用して製品の乾燥
     
    その乾燥施設とは、木で組んだ風の吹き抜ける棚。かつてはたくさんありました
     が、今では上の写真の右端に、わずかですが残されています。
下仁田が選ばれた理由は、ここの乾燥した気候にもあったわけです。
材料の木も、近くで調達できます。

広島で誕生した白石工業が下仁田に着目して工場を建設したのには、こうした条件に着目したとのことです。100年ほども前、情報を得るのも今のようにたやすくない時代、原料もエネルギーも地元で調達し、合理的な考えをもって始めたことは、なかなかのものだと思います。

人気の番組ブラタモリでは、高低差や崖、”きわ”の大好きなタモリさんが、ぶらぶら歩きながらあちこち紹介しています。「こういう高低差を利用した施設なんて言ったら、タモリさん、大喜びするんじゃないかな。」などと言っていた人がいました。本当に、そうかもしれない。

 下仁田にある中小坂鉄山でも、上から鉄鉱石を落とし、緩やかなトロッコに載せて自然の力で製鉄施設まで運び、流れてくる水をうまく利用し・・と、高低差をうまく利用していたなあ。知恵を絞って、努力していた優秀な人たちがいたといえます。

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「棚に、石灰の塊を人力で運び上げ、乾燥」。簡単に言っていますが、体力の必要な、大変な仕事だったわけです。その施設は、最盛期には100棟を超えていたといいます。下仁田町の方々がたくさん働いていました。
 今回たまたま、下仁田自然学校の関係者の方が、ここで働いていたことを知り、また当時の写真をお持ちだったことから、少々紹介してみます。白石工業ではもちろん写真を持っていますが、これと同じ写真は、ないとのこと。まだまだ、地元の方々などの手元には、いろいろな知られていない情報があるのではないでしょうか。


手前に林立するのが、石灰乾燥施設。
敷地のほとんどが埋め尽くされている姿に、圧倒されます。

下の写真はかつての工場全景。
後ろの山を崩し加工し、最後に下方にある乾燥施設で仕上げている様子がわかります。さらに手前に民家が立ち並びます。
  写真提供 堀越明子さん






















現在のこの付近の姿です
写真には感激しました。
堀越さんは、他にも当時の写真をお持ちです。記録として、こうした記録をまとめて残したら、いいだろうなあ。

なお、乾燥施設の記録保存調査冊子が下仁田町教育委員会により作成されています。平成25年のものです。当時働いていた方からの聞きとりも載っています。国の事業として、各県の産業遺産調査が実施されたようで、その時のものになるのでしょうか。

なお、白石工業と石灰・中小坂鉄山についてはこのブログでも、以前取り上げたことがありました。


 石灰
http://geoharumi.blogspot.jp/2014/06/blog-post.html

中小坂鉄山
http://geoharumi.blogspot.jp/2014/06/2.html

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ついでに近く(?)の石灰岩の鉱山を紹介。

  • 石灰岩採掘は、関東なら秩父の武甲山が有名。

石灰採掘で、山が半分削りとられています。
秩父武甲山 削られる石灰岩

武甲山
 左側が削られています。
いや、ちょっとわかりにくいか・・



叶山 写真提供 秩父太平洋セメント

  • 名前としては武甲山のように有名ではありませんが、神流町には大規模に採掘していて、山頂がすっかり削り取られた山があります。叶山です。そのうち、山がなくなる?


石灰岩採掘開始前の叶山  写真提供 細谷尚さん

これも叶山 平らになったところが削られた山頂
西御荷鉾の山から見た姿


 ここに見学に行ったとき、事務所の方が、八ッ場ダムの建設にはセメント材料として、この叶山の石灰が使われると話していました。ダムは、今、建設中です。
石灰岩の用途の最大のものは、この、セメントです。この石、東京のビルにも、高速道路にもなっているのでしょうね。

白石石灰のものは、セメントには使わず、もっと多種多様な用途に利用されています。




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全国では、今までにない豪雨に見舞われている人たちもたくさんいるのに、ここでは梅雨と言っても雨は降らず。
庭の花も枯れそう・・

いつもなら、梅雨に入るとネムの花が優しく咲きはじめ、花が終わるころから真夏・・でも今年はもうすっかり酷暑。
ねむの花も 今は写真のごとく,終わりの姿です。優しい花を、紹介しなかったのが悔やまれます。
「あとでいいや」はダメですね。
暑さに注意して、夏をのりきろう  です。 


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