2013年10月8日火曜日

岩石① 石灰岩 その2

 石灰岩ってどんな石?
理科の教科書だったら、どんなことが書いてあるでしょう。。。。


       
成分>
  方解石(カルサイト)という鉱物が主成分の石です。
 とはいえ、ふつう、「方解石」というのが何なのかがわからない・・・
 化学成分でいえば 炭酸カルシウム  
          
ますます何のことか・・?といわれそう・・・
 
 
方解石の透明な結晶
下の紙に引いた1本の線が2本に見える
大きく透明な方解石の結晶は、マッチ箱をつぶしたような形に割れ、何度割っても同じ形に割れ、文字の上に置くと、二重に見える・・・・こんなの、どこかで勉強したと、思い出す人もいるかもしれません。


東京の科学技術館で開かれた今年の『青少年のための科学の祭典」で、方解石岩塩を子供たちがとんとんと割って、同じ形に割れるのを体験するコーナーがありました。岩塩はサイコロ型に割れる性質があります。こういう性質を劈開(へきかい)といいます。
でも、こう聞いても、見た目からいうと、この透明な方解石と石灰岩は、ほとんど結びつかないなあ。
 
 
炭酸カルシウムという成分は、学校で使うチョークの成分になったり、卵の殻・貝殻の主成分だったりします。いろいろと姿形を変えて私たちの前に現れそうです。
ちょっと解説を試みてみます。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 
  • 材料の化学成分が炭酸カルシウムなら、これからできた結晶が「方解石」。     
  • 材料がお砂糖(化学の言葉ならショ糖)なら、これからできた結晶が「氷砂糖」、
      こんな
    関係かなあ・・・・
     
    さらに
  • 小さい方解石の結晶がたくさん集まって、石灰岩という石になる。
      一方、砂糖では
  • すごく小さい氷砂糖がたくさん集まって、金平糖になる・・・正確かな?・・・、ま、こんな感じで、ということでご勘弁願います。
    。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
判定の仕方、など

石灰石に塩酸をかけると、泡が出ます。泡は二酸化炭素です。
 
化学成分の炭酸カルシウムはCaCO3と表されますが 、いかにも二酸化炭素(CO
)が出てきそうです。
 
(化学の時間に大嫌いだった化学式=記号かもしれませんが、こんなふうに、化学式

      書くとよくわかることがあります。)
 ふつうの家には塩酸なんてありません。でも、塩酸の入った商品を使って同じことができます。トイレの洗剤のサンポール(商品名)には塩酸がたくさん入っています。結構濃いので、取扱注意です。薄めて使えます。結構おもしろいですよ。
石灰岩が材料のコンクリートでも泡が出ます。

 鉄よりやわらかいので、ハンマーやクギで傷がつきます。
 鍾乳洞の鍾乳石も方解石からできています。
 


石灰岩は川原のレキでは丸っこくて表面がつるつるしていますが、野外では表面が地下水や雨で溶け、独特の雰囲気を見せたりします。
               雨水で表面が溶けた石灰岩

              

 
<どうやってできた?> 生物からできた岩石です。
 サンゴ・貝殻・有孔虫などがたくさんつもってできたといいます。大昔のサンゴ礁がそのまま石灰岩の塊になっていたりもするとか。そんなわけで化石を含むことも多いのです。
・・・ということは、この岩石は昔の海の中でできた・・・
                                    *生物起源でないものもあります。
                                        

古い時代の古生代のものが多いのですが、もっと新しい時代のものもあります。
下仁田にも、
数億年前の古生代のもの(地質年代の石炭紀からペルム紀という時代のもので、2億年・3億年といった、はるか大昔)と、1600万年ほど前のもの(新生代 中新世がみられます。
                     (
地球の歴史では、1600万年は新しい時代なんですね~)

                                                                                         おみやげものの星砂。白いのが有孔虫


*有孔虫:海にいる石灰質の殻を持った小さな原生動物(殻をかぶったアメーバーといった感じ)。  沖縄土産の「星砂」は有孔虫の殻です。
☆の形をしているかな? 
いているのと、海の底にいるのとがいて、普通は1mm以下程度の大きさ。
この仲間は古生代の初めから、つまり5億年ほども前から生息というからすごいですね。     


日本の石灰岩は、多くはそれほど大規模でなく、地層中に切れ切れに分布しています。
雨水や地下水でほんのわずか、ゆっくり溶けます。下仁田にも、そうしてできた小さな鍾乳洞があります。
    例:下郷(しもごう)
()の鍾乳洞 
            
 鍾乳洞の中の鍾乳石(左の写真)
一度水に溶けた石灰成分が、ふたたび固体になり鍾乳石となって姿をあらわしています。
学校の理科の時間で、石灰水に二酸化炭素を吹き込むと、白く濁るという実験をしたことがあると思います。あの濁りは石灰岩や鍾乳石の成分と同じというわけです。

写真 堀越武男さん

石灰岩は日本で自給できる、数少ない地下資源です


< どこにあるの?>

下仁田では、ほとんどの石灰岩体は中央構造線の南地域にあり、古い時代の地層(秩父帯の地層)に多く見られます。
中央構造線の北の地域では、見つかっているのは新しい時代・新生代の石灰岩(中小坂虻田(あぶた)地区)の石灰岩だけです。
                                         

下仁田では青倉川沿い赤谷集落付近に石灰岩の大きな崖が見られます。ここではかつて採掘され、今でも会社があります(白石工業株式会社 白艶華工場)。写真は前回載せました。
この石灰岩の崖は道路わきに見られますが、昔はもっと大きな崖だったそうです。
なお青倉では化石は見つかっていません。25000万年前の石灰岩と言われています。     

又山ふもとの下郷には小さな鍾乳洞があります。

平原(へばら)ではフズリナ化石を含む石灰岩が見られます。
      ( 採取した化石は、自然史館にもあります。写真を撮っていません。ゴメンナサイ)
中小坂(なかおさか)虻田(あぶた)には、新生代という新しい時代の石灰岩があります。大型有孔虫(ゆうこうちゅう)レピドシクリナをたくさん含む石灰岩として有名です。

石灰岩といっても、砂や泥が混じり、砂岩・泥岩と交互に層(層)(ごそう)
をつくっています(下の写真)。大きな塊となっている古生代のものとは感じの違うものです。

この石灰岩を持ち帰り、うすく切って磨き、ガラスにはり付けてプレパラートにして顕微鏡で見ると、右の写真のような化石の集まりが見えます。
下仁田自然学校の堀越さんが作成し、写真撮影もされました。
    

   レピドシクリナ  写真 堀越武男さん


    
             
虻田の石灰岩 野外の様子
  

砂泥と交互の地層をつくっています。
一方、古生代のものは塊状 になっています。

写真 堀越 武男さん




石灰岩に含まれる化石


レピドシクリナ>
上に書きましたが、もう一度。
()()中小坂(なかおさか)虻田(あぶた)の石灰岩は、大型有孔虫レピドシクリナをたくさん含むことで有名です。この化石が出てくると、何年くらい前とか、暖かい海だったとかわかるという化石です。
「大型」とは言いますが、大きさは数㎜。有孔虫の中では大きい、ということです。
ですから、よく見るにはルーペ・虫眼鏡が必要で、さらによく見るには、切って磨いて、顕微鏡などで見ることになります。
フズリナ >
(平原(へばら)
()みられます。
フズリナは古生代という古い時
代に生息していた有孔虫の一種で、生息していた時代を知るのに使われる、
とても有名な化石です。
下仁田とは別地域ですが、風化で化石だけが転がり出る場所もあり、そんな地域では米粒石などと呼ばれました。
ちょうど米粒のような感じに見えるのです。)

栃木県葛生のフズリナ(米粒石)

石灰岩の中に貝やサンゴなどの他の化石は見られないの?
  下仁田では、今のところないのかなあ・・・

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ついでなので、おまけの話を
 石灰岩や大理石(石灰岩からできます)の中の化石を気軽に見られる場所は大都市です。
先日東京駅に行ったら、丸の内北口(丸天井にいろいろな像で有名になった場所)の床に、たくさんの化石がありました。みんなが上を見上げているとき、下を見ているというのも、何だか妙に見られそう・・・。今思い出そうとして、「サンゴだったっけ?」などと、なんとも頼りないかぎり。「こういうのはネット投稿している人がいるだろう」と・・そういう人、たくさんいるのですね。ウミユリ化石とありました。そうだったっけ・・などと、今頃思っている・・ちょっと情けない。
化石は有名どころのデパートの壁などでさがすと見つかります。壁に大きなアンモナイトのはいった場所だってあります。町中化石観察会、なんて開かれることもあります。もっとも下仁田や私の住む玉村町では、あまりないと思いますが。そういったことにお金を費やすのは、資本力のある所といえるかも。
 上信越自動車道甘楽パーキングエリアの上り線では、一部の柱にびっしり化石のはいった石灰岩がはり付けてあります。下仁田自然学校校長の真野さんに教わり、のぞいてきました。我が家に近い場所なのでふつうなら絶対に立ち寄らない場所です。見事な化石!(外国産のものです)。石器や古墳などの埋蔵文化財もおいてあったり、富岡製糸のレンガを模したレンガの壁に屋根がみられ、高速道路のパーキングとしてはあまり見かけないつくりでした。目をとめる人はあまりいない感じではありましたが。
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l  生物が集まったのなら、化石だらけでもいいと思うのに、それほど化石が見られないのはなぜ?
 岩石は、長い間には圧力や熱を受け、変化していきます。このとき、再結晶といって、
 結晶が組み変わっていったりして、化石の姿はだんだん失われていきます。

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石灰岩の分布地域には、他の場所ではあまり見られない植物が育つことがあります。あるいは他地域よりも石灰岩地で多く見られる植物が見つかったりします。
 
叶山では、石灰岩を掘りとっていますが、山の一角に石灰岩地に育つ植物を集めて、管理していました。その指導を下仁田自然学校の名誉顧問の里見哲夫さんがおこなっています。
ここを訪ねたとき、キバナコウリンカが花をつけていました。叶山とすぐ近くの二子山だけに見られるという貴重な植物で、絶滅危惧ⅠB類に指定されているものです。

日本の土壌は少し酸性の土です。日本の植物はこの土に適応した性質をもっていることになります。ところが石 灰は水に溶ければアルカリ性になるわけで、石灰岩の上では、通常の土とは違った性質になります。そんな特別の場所に育つ植物は、少し特別の植物だったりするわけです。
下仁田にある青倉や下郷の石灰岩体は小規模のものですが、それでも、石灰岩地を好む種類が数種見つかっています。

写真: キバナコウリンカ
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賢治は農家の人に、石灰の効用を教え、その知識を広めようと努力しました。今では家庭菜園をおこなう人でも、ホウレン草をまくときは石灰をまきます。育ちがよくなるようにと。
野菜を育てるとき、たいてい石灰をまきます。考えてみたら、野菜の原産地はほとんどが外国。日本にやってきたこれらの植物たちには、日本の土は少し酸性がきつかったのかな。

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