2015年3月30日月曜日

下仁田地質案内16  かんらん岩のある山

  かんらん岩の山  黒内山(くろうちやま)

かんらん岩・・・どんな石かときかれれば・・・

 教科書を開けば、「マントル上部はかんらん岩質岩石からなる」などと書かれています。
   地球表面をおおうのが地殻で、その下がマントル、
     つまり地下数十kmの深さの主要な岩石 ということになります。
   そんな岩石が下仁田で見られるというのですから、「どんなものなのだろう?」
   と、ちょっと
興味が湧いてきます。

単純化してかんらん岩のことを書いてみると
 ・地表で見られる岩石中で、とても比重が高い、つまり、同じ体積で較べたら、
    ずっしり重い

 ・鉄やマグネシウムを多量に含む
 ・「超塩基性岩(超苦鉄質岩)」と分類される
      塩基性岩(苦鉄質岩)は、玄武岩やはんれい岩のような、黒っぽい石のグループです。
        それに、「超」がつく石というわけです。

 ・地中深くから持ち上げられてきた・・・どうやって? 
      でも、もしそうなら、地下深くの情報を伝えてくれるかもしれません。

 ・水と反応して、蛇紋岩になる。蛇紋岩が風化すると石綿(アスベスト)ができる・・・
   (アスベストは盛んに利用されましたが、発がん性が判明。大問題になったので、
    ご存知の方も多いかと)
なんだか、あまり普通ではない石の感じがしてきます。


こんな石が下仁田にもあります。
右図の赤丸(下のほう)の黒内山は、かんらん岩からできているのだそうです。

鉱物ウオーキングという本で、上蒔田(かみまいた)を流れる川の川原の石に、ダナイト(ダンかんらん岩)がたくさん見られると、紹介されていました。右図の上の赤丸付近です。
ダナイトとは、ほとんどかんらん石からなる石です(主要造岩鉱物にカンラン石という鉱物があります)。
この筆者はご存じなかったかもしれませんが、この石は黒内山起源です。

下仁田自然学校の元運営委員の方は、黒内山周辺の尾根を歩いて、そこにかんらん岩がずっと分布しているのを確かめたことがあるそうです。

 
というわけで、黒内山から流れ出す沢では、この石が転がっているわけです。北側のいくつかの沢で見られるそうです。また、南側、稲含山方向でも見られたりするそうです。

下蒔田の川原で、この石を拾ってきました。地域の集会所のわきを流れる小さな川の川原です。
超塩基性岩ですから、すごく黒っぽい石だろうと想像するのですが、「表面が錆びたようになっているからすぐわかるよ」といわれました。左写真の、錆びたような色の石です。
教わっていなかったら、「黒い石、黒い石・・・」と探していて、きっとわからなかったなあ・・。割ってみると、中は黒いのですけどね。左下の写真のように。
鉄分をたくさん含むといいますので、それが酸化して(錆びて)鉄さび状になっているというわけでしょうか。どんな化学変化なのか、ちょっと知りたい気分です。












下仁田自然学校運営委員の中島啓治さんは、この石の顕微鏡用薄片をつくり、顕微鏡写真撮影もしています(右写真)。縦の線は1mm。

偏光板というものを通して見たものになります。きれいですね。
この一つ一つの丸い部分が結晶で、鉱物はカンラン石が多いわけです。ですが、岩石顕微鏡は馴染みのない方が多いと思いますので、肉眼で見たで見たカンラン石の写真も載せます(左下写真)。
(カンラン石という鉱物がたくさん集まって、かんらん岩という岩石ができるという関係です)


これもきれい!
じつは、カンラン石のきれいなものはペリドットとよばれ、8月の誕生石になっています。
なんと宝石扱い!!
 オリビンともいいますが、これは、オリーブ色をしていることからついた名前です。「かんらん」という植物の実の利用法がオリーブに似ていて、オリーブのことを橄欖(かんらん)と書いたので・・とかいった、名前の由来があるようです。いまではほとんど知られていない言葉になっていますが、鉱物の名前では、主要造岩鉱物として知られています。

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3月に、下仁田自然学校主催の研究交流集会が開かれました。そこで、新潟大学の井澤さんから黒内山の石についての報告がありました。南北2km、東西1kmのひろがりのある岩体で、北関東最大だそうです。
ちなみに、関東山地北部の御荷鉾緑色岩(三波川結晶片岩のうち、変成の弱い地域)分布地域には、小規模の超苦鉄質岩が点在するのだそうです。

 黒内山のかんらん石をより専門的にこまかく見ると、主にダナイトウェールライトに分けられる
 ダナイト・・・・・・・・ダンかんらん岩、ほぼカンラン石からなる石
 ウェールライト・・・単斜輝石かんらん岩、透輝石を10~50%含むカンラン石に富む石
    ちなみに、このウェールライトというのは、日本では三波川変成帯中に特徴的に
    分布しているものとのこと。


この岩体の分布を調べたところ、岩体全体の下に底角断層がある可能性がみえてきたそうです。つまり、断層で区切られて、結晶片岩の上にかんらん岩の塊が乗っている・・・
なんだか、くりっぺ、根なし山と同じような形に思えてきます。でも、どうなんだろうかなあ・・さらに、これから解明されていくのでしょう。
さらに、成分分析から、このかんらん岩の起源にもふれていました。この石の起源を考えていくと、いろいろ難しい話が出てきそうです。


かんらん岩でできた山では、北海道のアポイ岳が有名です。
かんらん岩から蛇紋岩ができるといいますが、群馬でも尾瀬の至仏岳は蛇紋岩の山として知られています。こんな山では、そこにしか生育できない植物がたくさん知られています。そんな意味では早池峰山も有名。マグネシウムなど植物の生育を阻害する成分が多いために、こんなことがおこるわけです。
黒内山は小さな岩体ですから植物にまでそれほど影響を与えるわけではないのでしょうが、それでも、「特別」な気分がしてきます。

かんらん岩はどこにもここにもある石ではなさそう。私もほとんど見たこともないし、知らないことばかりの石です。
下仁田にあるとはいえ、黒内山にはなかなか行けない。私も行ったことありません・・・でも岩石は川原で手軽に拾えます。
思いついたら、拾ってみるのもいいいと思いませんか。













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