早春、まだ木々が葉を開かない頃に、光の差し込む林床に可憐な花たちが姿を見せます。
そして木々が葉を開く頃には姿を消します。こんなふうによばれます。
スプリング・エフェメラル、春の妖精 、春のはかないもの、春植物
名前を挙げれば・・カタクリ、イチゲの仲間、ニリンソウ・フクジュソウ・ヤマエンゴサク・・・・・・
早くに咲く花、セツブンソウを見てきました。秩父小鹿野に群生地があります。2cmほどの小さい花ですが、かわいらしく、カメラを抱えた多くの人たちが訪れています。
石灰岩地を好むとの説明。下仁田にはなさそうですが。
ツバキ・・・・・日本の花
ヤブツバキが赤い花をたくさんつけています。
庭先に植えられた様々な園芸品種のつばきもたわわに花をつけています。そんな豪華な花も含めて、地面に重たく散り敷いた花を集めて首飾りをつくった記憶がうっすらと浮かんできます。
ヤブツバキ
欧米ではつばきをカメリアとよびます。あでやか,異国的で「日本のバラ」,花の貴族にたとえられたそうです。品種改良を重ね、1万種を超える品種を生み出したといいますが、はて、本当のところ、何種類あるものなのか・・・
日本のつばきは床の間に似合う清楚さをもったイメージかと思いますが、カメリアはもっと華やかな感じがします。大きく,厚みもたっぷりあって,社交界のパーティーに身につけて出かける・・・
ベルディ作曲のオペラ「椿姫」にこうしてつばきが登場してくるわけです。「三銃士」を書いたデュマの息子が原作というオペラの中で歌われる「乾杯の歌」は、多くの方がどこかで聞いたことのある旋律かと思います。
品種名・桃太郎
東アジアに固有なつばきそのものがヨーロッパに持ち込まれたのは、16世紀、ポルトガル人によって。18世紀初めイギリスに伝えられ、19世紀のフランスでは夜会のアクセサリーとしてパリジェンヌの胸をときめかせた・・こうして椿姫もうまれる・・・
ヤブツバキからはだいぶイメージが違ってきました。
人が手を加える前、その地域をもともとおおっていた林は何か。
私の住む玉村町をもともとおおっていた林は照葉樹林です。群馬よりだいたい西の地域・関西・九州に広がっていて、カシやシイの木が生い茂る森です。そんな森にいつも見られるのがヤブツバキ。森を特徴づけるので、専門家は”ヤブツバキクラス”という言葉を使っているくらいです。
ツバキの仲間は日本・朝鮮半島・中国の一部にあるといいますが、それがヨーロッパの海外進出とともに世界に広げられていったというわけです。
それにしても,そこらにはえているヤブツバキ、そのすっきりとした花には魅力があります。
しだれ桜で知られる高崎の慈眼寺に隣接して、たくさんの品種のツバキが植えられています。品種名が書かれてありますが、そのプレートもだいぶなくなっていました。スペースも狭いので、育ちも、もう一歩でしょうか。園芸品種は人の手で世話する必要もありそうです。 いくつか紹介します。お寺に植えてあるので、いかにも「つばき」といった感じの、和風の品種が多いようです。(ヨーロッパでは、バラにたとえられたのですから、多分、八重咲きの大ぶりの花が好まれたのでは)
玉霞 ふくつつみ 太郎冠者
正義(まさよし)
←都の春 百合つばき→
高源(こうげん) ↓ 鹿児島
玉村町にあるわずかな面積の照葉樹の林が、かつて北関東の平野を広くおおっていたシラカシの林の名残といわれ、群馬の自然100選というものに選ばれています。だいぶ以前になりますが、こんな照葉樹林の名残はどれくらい残ってるのだろうと調べたことがあります。1990年の群馬県林務部発行の本に載っていました。県内では、次の場所でした。
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安中湯沢鉱泉付近の急斜面 (比較的大規模)
下仁田不通渓谷 (急斜面)
富岡貫前神社 (神社の森)
玉村上福島 (屋敷林・・この地域では空っ風を防ぐ防風林が民家の周囲にあった)
桐生泉竜院 (神社の森)
他では、アラカシ林が前橋橘山の急斜面にあります
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東日本でも早くに開かれたといわれる北関東のこの地域には、昔の植生そのままの場所は、ほとんど残っていないようです。下仁田にもあるわけです。大切にしなければ。
下仁田のシラカシ林の中に生える植物をあげてみます。
どれも照葉樹林によく育つものですが、特徴づける種類をいくつか太字にしてみました。
<高い木>
シラカシ アラカシ コナラ ケヤキ ムクノキ
<低い木> ヤブツバキ アオキ シロダモ
テイカカズラ キヅタ ムラサキシキブ
ダンコウバイ アブラチャン 茶
<草>
ベニシダ ヤブソテツ
ヤブコウジ ヤブラン
アイアスカイノデなど
←キヅタ アオキ→
玉村の照葉樹の森は、小さな川沿いで、利根川を渡る大きな橋の近く。ゴミなんかが転がっていそうな雰囲気。価値をちゃんと知るというのは大切ですね。知らぬ間に消失してしまわないためにも。
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