下仁田町の鶏冠石は「群馬県の石(鉱物部門)」として公式に選定されています。
元の紙面 |
お読みいただくと、鶏冠石のことがスッと頭に入ると思います。
印刷紙面をそのまま載せると文字が薄くて読みにくいので、横書きにして、以下に書いてみました。
世界に誇れる下仁田のお宝
菅原久誠(群馬県立自然史博物館)・
吉川和夫(群馬大学名誉教授)
世界に誇れる下仁田のお宝といえば下仁田ネギのほかにいくつ思いつきますか?胸を張って世界の宝だといえるもの、それは大字南野牧にある西牧鉱山(にしのまきこうざん)の鶏冠石(けいかんせき)という石です。鶏冠石はヒ素とイオウでできていて、読んで字のごとく、鶏の真っ赤なトサカのような色をしています。
鉱山というのは、私たちの生活に役立つ資源となる石を掘り出す場所です。西牧鉱山はもともと金鉱山で、その後にヒ素の鉱石を掘った鉱山ですが、県内の多くの鉱山と同様に、すでに閉山しています。残念と思いきや、鉱山跡地を訪れると、かつて鉱山がにぎやかだったころの作業所の跡や、石をとりだすために潜った坑口や鉱石を処理した跡などが残されています。これぞ産業遺産と言ってよいでしょう。賑やかだった頃は、重たい鉱石を運ぶためにトロッコも通っていたとのことです。
今年、下仁田で発足した鉱山研究会の聞き取り調査で、当時西牧鉱山で働いていた小金澤正代さんにお話を伺うことができました(詳しくは、「くりっぺー下仁田自然学校だよりー」第。93号10~13ページをご覧ください)。小金澤さんによると、石を取り出すトンネルの奥に、幅30センチもの鶏冠石が見つかったことがあるそうです。鶏冠石はトンネルの奥で、たなびくきらびやかな帯のように赤く光っていたことでしょう。ついでに、西牧鉱山は、若林鉱という美しい黄金色の石が世界で最初に見つかった鉱山でもあります。そんな石たちが織りなす光景を想像すると下仁田町の西牧鉱山ってすごいなあ、としみじみ思うのです。
実は昨年、日本全国からの一般投票と、石の専門家たちによる「県の石」の選考が行われ、西牧鉱山の鶏冠石が群馬県の石の一つとして選ばれました。これは、一般の人たちにとっても、専門家にとっても下仁田町の西牧鉱山の鶏冠石が「すごい!」と認められている証拠です。日本全国の県の石は、それぞれの県の専門家によって読みやすくまとめられて、1冊の本になる予定です。
これだけ知ってしまったら実際に鶏冠石を見てみたいと思いませんか?少しだけ石の特徴をお話しすると、鶏冠石は光と湿気に弱い性質を持っています。つまり、展示することで光にあったっていると、きれいな赤色がだんだん失われてしまいます。それでも下仁田町の皆さんにぜひ下仁田のお宝を見ていただきたいと言うことで、青倉にある下仁田自然史館は鶏冠石を展示しています。これを機に、自然史館にお越しください。
鶏冠石 |
下仁田の鉱山に関する情報をぜひ下仁田自然史館にお寄せください。
℡0274-70-3070
とてもありがたい紹介を書いていただきました。感謝です。
それぞれの地域、場所で
「わが町のお宝」
を語るのも楽しいかも。
こんなふうに、楽しくわかりやすく
紹介できたら、もう、素敵です。
そんなお宝なんかないよ、という声が聞こえてきそうですが、どこかのお墨付きをもらっている必要はなくて、自分たちで、価値を発見するつもりで周りを見回すことがいいことかと。
NHK番組の「ブラタモリ」は地質を広めることに貢献していて、地理学会賞、地質学会賞を受賞していますが、自然や歴史を探してあちこち旅し、それぞれの地域で解説してくれる人がいて、見ていて楽しい番組が成り立っています。ほんのちょっとした坂や段差、道の曲がりが、突然意味を持って、きらきらと輝いてきます。それを解説する地元の人がいて、立派なわが町発掘になってもいると思いませんか。
一人で見るのも楽しいけれど、誰かと一緒だと、また楽しい。一緒にうなずいたり、解説してくれる人がいることが、理解も感激もふかめるし、記憶にも残る・・・
SNS発信大好きな現代っ子たち、「いいね」の数を競うばかりでなく、「価値をみつけてみよう」と頑張っても面白いかも。
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鉱山は大地の財産、人は実に多種多様なものを見つけ出し、利用しています。最近は、レアメタルなどと言って、ハイテク産業に使われたりする、聞いたこともなかったもの達も多種あります。化学の時間に眺めた周期表の下の方に載っていた聞いたこともない元素達たちレアメタルが、たくさん見られます。 携帯電話などにもいろいろつかわれているといいますから、知らないうちに、その恩恵をうけているわけです。あらためて、地下の資源たちにも目を向けてみたくなります。
石油、石炭から金、ダイヤモンドまで、古くから重要な資源とされた鉱物たちを見たとき、それならその富を大量に持っている国たちは、それを売って豊かに幸福になりそうだと思えば・・・たいてい、その逆に思えてきます。国民は貧しかったり、戦乱にさらされたり。石油産油国が国民が豊かで穏やかに暮らせるかというと、むしろ逆かも。ダイヤモンドだって掘り出す最下層の人たちは極貧で、一方で「血塗られたダイヤ」などと、闇の世界の暗躍を感じさせることもあります。
人は、こんなにも様々な資源の利用法を見つけ出す賢さを持つのに、欲得が絡むと、どうしてこんなにも愚かなのかと思ってしまうほどです。そういった世界への関心も無視してはいけないでしょう。
下仁田には複雑な地質があり、珍しい鉱物も産出します。こうした純粋な自然への関心とともに、そこに生きた方々もいたわけで、そういった面に関心を寄せてもいいのかも。人と大地のつながりがここにもあるわけです。
ハイテクとは縁のない時代、そこで鉱山を掘った方々が、数としてはわずかとはいえ、今でもご健在でお話をお聞きできる、そんな今を、大切にしたいですね。
体験をお聞きしてそう思いました。
こうした方々は戦争を体験され、鉱山の厳しい労働も目にされています。どうぞお元気でお過ごしください。
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