2015年1月11日日曜日

地質案内その8 奥栗山渓谷・稲含山:古い地層

下仁田の南部地域には 秩父帯(秩父中・古生層)とよばれる古い地層がひろがります。
今回はその中から、ハイキングコースとなっている場所2つを紹介します。

奥栗山渓谷

 暑くて暑くてバテてしまっているような真夏にいくと、ありがたみが伝わってきます。
ひんやりした空気と水しぶきが、なんとも心地良い・・しかも、下仁田町市街からそれほど遠くはない

ここでは秩父帯の岩石チャートしぶきを上げる清流が渓谷美をつくりだしています。
流れる川の名前は栗山川、源流は下仁田町最高峰の白髪岩(1512m)の北面にあるといいます。

渓谷の周辺地域では、流れ落ち落ちる清水を、ポリタンクに満たしている人たちも見かけます。
今の季節は真冬・・・この季節に行ったことはないのですが、町のすぐ近所の場所だからと、油断するのは禁物です。氷のついた斜面から落ち、亡くなった方もいるそうです。

  
右図の赤丸の左が奥栗山渓谷、右が稲含山
どちらも古い時代の地層・秩父中古生層地域にあります
白丸の数字は、この図ののった本の解説番号です「。しもにた」が下仁田駅です。「下仁田自然学校著 下仁田町と周辺の地質」より 




下仁田町役場から、約8kmとのこと。下仁田駅からだったら、もうちょっと近い。
ただし、この案内図に書かれた「駐車場」は、舗装してない林道を車で走らなければたどり着けません。一般的には、もう少し下の、舗装された道路脇にある駐車場から歩いた方が安全かもしれません。それほどの距離ではありませんので。林道では、パンクしたという話を聞いたこともありますし。                (作図は細矢尚さん)

*1周コースが紹介されていますが、後半の作業道は迷いやすく、また見所もあまりないので、
「三段のはしご」あるいは「昇竜の滝」から引き返した方が良いかとも思います。見晴台も、それほど良い見晴らしでもありませんし。

     ここは赤いチャートの続く渓谷です


細かな縞模様の見えるチャート。

チャートの色には白や灰色、黒などありますが、ここのは赤色です。

この硬い石をえぐった水の力にも感服します。



チャートは海の小さなプランクトン・放散虫が海底に降り積もってできました。
これだけつもるには、気の遠くなるような長い時間がかかっているはずです。

チャートの解説はこのブログ2013年10月12日付け
https://www.blogger.com/blogger.g?blogID=481530670025045050#editor/target=post;postID=1491134283884306050;onPublishedMenu=allposts;onClosedMenu=allposts;postNum=73;src=link

しっとりと湿った空気に満たされて、岩はコケやシダにおおわれています。
何種類ものコケやシダは、独特の雰囲気を醸し出しています。
比較的めずらしい種類もあるようです。

垂直のコンクリートの堰堤には、ハートの形の「シダの前葉体」がたくさんついていました(下写真左)。ご存知でしょうか、前葉体・・・シダの胞子が発芽して出てくるものです。これに卵や精子がついて、それが受精して、それからやっと私たちの知っている「シダ」がはえてくる・・・こんな話が高校の教科書(中学はどうかなあ・・・)にのっていても、多分本物を見たことのある人はほとんどいなくて、多分、何のことかわからないで終わっているものです。ちょっとした工夫をすれば、胞子をまいて前葉体を発芽させることはできるのですけどね・・ハート型というところがいいなあ。




「三段のはしご」のまわりも、苔におおわれて,いい雰囲気。
はしごを登った先は、しばしば斜面が崩れて、通路が埋まっています。そんな時は、無理をしないことです。
もし先に進めば、きれいに残った炭焼き窯が見られます。
炭焼き窯はたいてい天井が落ちているのですが、ここのはきれいに残っていて、すてきです。

この渓谷からはちょっとはずれますが、水をくみに訪れる場所が見られます。写真の場所は、水神様をまつっているのかな。人々がきれいな水を汲むところが、何ヶ所かありそうです。

こんな場所を、夏になったら思い出してみませんか。
はるか昔、深い海の底だった、海の底にたまった小さな生き物が石になった、そんなものの上を歩いている・・・こんなことを想像してみながら。

稲含山

神様にゆかりのある山。古くからの信仰の山。
のぼったことのある方もいらっしゃるでしょう。私は一度だけ。
山頂にはもちろん神社があります。木曽の御嶽は噴火しましたが、この山は絶対噴火しません。なぜって、ここはチャートの山ですから。
足元の石を見たり、育つ植物を見たりして登ったら、ひと味違う登山になりますよ。
 案内資料を紹介します。自然学校連絡誌の「くりっぺ」に載せたものです。
 
 


山頂にはかつてサルオガセが見られたそうです。
木にぶら下がった糸くずのような、幽玄な雰囲気を漂わせるもの。ぶら下がるのは糸くずでもコケでもなく、地衣類です。私がこれを最初に見たのは、尾瀬へ歩く道でした。印象深く、高校生の頃の話なのに、今でも思いだせます。
里見哲夫さんが採集した標本があるのですが、写真を撮るのを忘れた・・・そこで、稲含山とは縁もゆかりもない場所のサルオガセの写真を載せます。うすく緑がかり、ぶら下がったクモの巣の塊、というより、とろろ昆布のようなのがサルオガセ。
もうちょっと拡大したものだったらよかったのですけど、とりあえずご参考に。

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