2016年10月24日月曜日

トコロジスト・・・ある場所の専門家

トコロジスト って・・・

1か月ほど前だったでしょうか、朝日新聞の天声人語に、「トコロジスト、この言葉知りませんでした」といった出だしで、紹介の文章が載りました。
ご存知でしょうか、この言葉・・・・・普通、知らないですよね。
多分、十数年前に新しく勝手に作った言葉ですから。
    意味は・・・「所(場所)」+「ジスト(専門家)」…場所の専門家。

たまたま私は以前からこの言葉を知っていました。浜口哲一さんという、平塚市博物館職員の方が提唱したものです。地道に自然観察会を行っていた方で、この方の言葉に、「なるほどな」と思っていたからです。トコロジストについて2007年に書かれたのが、(ちょっと長いですが)、以下です。

「私が最も苦手とする質問は「あなたのご専門は?」と聞かれることです。仕事柄、いろいろな生きものについて広く浅く扱ってきたので、「鳥の専門家」とか「鳴く虫の専門家」と名乗ることにどうも躊躇を感じてしまうのです。
   中略

そんな気持ちでいたところ、ふと気づいたのは、何も学問分野や分類群だけが専門家の尺度ではないのではないか、「ある場所の専門家」という存在があってもよいのではないかということでした。私でいえば、「平塚の専門家です」と宣言したらどうだろうと思いついたのです。考えてみると、地域の現状を把握したり、その将来計画を立てるというようなときに、さまざまな分野の専門家の力はもちろん不可欠ですが、その土地について隅々までよく知っている人も大きな役割が果たせるのではないでしょうか。
 トコロジストは、その土地の専門家ですから、地形地質や動植物はもちろん、歴史・名所旧跡・民俗伝承などにも関心を持ち、さらには土地の所有関係や法的な位置づけ、行政による将来計画などについても積極的に情報を集めるとよいでしょう。何よりも、自分の足で常に歩き回り、実際の状況を把握するのが大事なことです。一人で何でも調べるのが難しいときは、得意分野を受け持ちながら、トコロジスト集団をつくっていくという発想も必要でしょう。
  埼玉県の自然観察指導員・小見寺公一さんは、会報特集の中で「地元のことは幅広く知っており、そうした視点から人に伝えたり、行政に意見を言う」と述べられています。これは、まさに私がイメージしているトコロジストそのものの姿ではないかと感じました。」   会報「自然保護」より

  
こんなことを紹介したのは、ジオパークガイドというのは、本来こういった役割を持つものではないかと、ふと思ったからです。観光客を呼びこんで地域活性化のお手伝いをするもの、と行政から見られているだけなら、数年もしたら、熱意も失せる?まあ、気の合った人でもいれば、それが楽しいから続く・・・。
でも、だいいち、今時そんなに簡単に観光客なんてやってこない。

下仁田という場所に行ってみて思ったのは、自然も人の歴史も、たくさんの財産のある地域なのでは、ということでした。でも、いくら財産があってもその価値を知り、伝え広めなければ、忘れ去られて埋もれてしまいます。現在の産業界にとっては、細やかな自然やら人の歴史には価値はないでしょう。平坦地で大都市に近いほうが利益を上げやすいことでしょうから、山がちの交通の大動脈からはずれた場所は、一般的には不利とみられるでしょう。どこからか仕事がまいおりてくることはめったなことではないでしょうから、知恵と努力が求められる・・・・頑張れ、です。

先日、鶏冠石の鉱山・西ノ牧鉱山のある場所に住んでいる方に、たまたま出会いました。
厳しいお仕事の合間に、山を歩き、渓流釣りを楽しみ、また子供のころは鉱山付近は遊びの場。昔は金色や銀色の鉱物が散らばっていて、金かと思ったとか(黄鉄鉱でしょうね。これ、騙されるんですよね)、楽しいお話も。銀色は輝安鉱?
この方はクリッペのすべり面も見に来られていて、町のことにも子育てにも自然の保護にも、話がはずみました。ですが、鶏冠石が群馬県の石に選ばれたことをご存じなかった!!「我が庭」のことなのに!
「下仁田の西ノ牧鉱山は、鶏冠石の解説で、産地として全国で最初に名前の出る場所ですよ」と伝えたら、「あんな場所が・・・」と、びっくりされていました。
地域をご存じで、自然も好き、子供も好き・・・「難しいことは何もわからないから」とおっしゃっていたけれど、トコロジストにぴったりかも。
「県の石」に選ばれたことを、こんな方が知らないのは、町の手落ちです。町には一言連絡しておきましょう。
権威ある所からお墨付いただいたわけでそれを町民に知らせ、町で盛り立て、町の誇りとしなければ。

浜口哲一さんは博物館定年後、大学で講義することになりましたが、その直後、惜しくも亡くなりました。
本棚にあった著書を、取り出してみました。書名は
   「地域と市民を結ぶ博物館 放課後博物館へようこそ」

平塚博物館のHPをのぞいてみました。オギとススキの違いについて、解説が載っていました。「しぜん探偵 オギを語る」などと題して、オギ・ハギ・ススキ・ヨシなどを解説していました。
前回このブログでも紹介した話。なんだかうれしいですね。同じことを考える人がいるというのが。


秋が近づく荒船山周辺

 山が色づき始めました。妙義をはじめ奇岩の峰のそそり立つ山々は、モミジが映えます。
西上州にはモミジが種類も量も多くあります。一山超えた碓氷峠近く、今は廃線の信越線の横川駅近くで、車窓から見た紅葉の美しさからつくられた、と言われている歌が、あの有名な童謡「もみじ」。 
    「秋の夕日に 照る山紅葉(もみじ)
     濃いも薄いも 数ある中に
     松をいろどる 
     山のふもとの 裾模様  

モミジ目的で出かけたわけではありませんが、この山すそで見たものを少し紹介。

下仁田から佐久に抜ける道路わきから見上げる荒船山
 
荒船山周辺は少し色づき始めていました。

マムシ草の赤い実。 草全体有毒です。
 
木の実・草の実

知らないものは口に入れないで。
毒のものもあります



紅葉の始まった山道には、もみじやクリ、ミズナラなどの落ち葉も散っています。
ミズナラのどんぐりを拾いたかったのですが、まるっきりなし。今年はクマの出没が多く、ニュースによると、クマの食料ミズナラが不作だとか。そういうことか・・

何に見えますか?
炭焼き釜






    
 
 
 
 
 
 
 


 
岩を抱いた木の根はなんだか、お尻みたい。
炭窯は、きれいに残っていますね。たいてい、天井が落ちています。私が下仁田でこうしてきれいに残っているのを見たのは3個目です。
キノコ・・・縞模様がきれい
 



まん丸ですねえ・・・どしてこんなに丸く??







アカウライワタケ

イワタケって知っていますか。
乾燥した岩壁にくっついている、丸くぺたんとしたもの。地衣類です。珍味とされ、これをとろうとして転落事故があったり・・・でも、そんなにおいしいかなあ・・洗ったりの手間が大変だし・・  写真のものはアカウライワタケ。湿った沢沿いの石の上なんかにあって、「イワタケ??・・・」と思たものです。生えてる場所が湿っていて、イワタケのはえるようなところに思えない・・・種類が違いました。荒船風穴付近にもありますよ。

平地の秋
 
 どこにでも生えている
セイタカアワダチソウ。

日本の景色になじんだのかも・・

かつて花粉症の原因と言われ、悪役のイメージが定着してゆきました。セイタカアワダチソウ撲滅作戦がお役所を中心に行われたりもしたのです。でも、虫が花粉を運ぶのに、花粉症?変じゃない?と思いました。風で飛ぶ花粉が花粉症を引き起こしますからね。間違いです。今でも花粉症の原因と思っている人、けっこういるかもしれません。
 このセイタカアワダチソウという花、北アメリカ原産で明治時代に観賞用に日本に持ち込まれたそうです。その後庭から逃げ出し、空き地、河原を一面に埋め尽くすまでに広がっていきました。
 高度成長のころ、日本中にできた埋立地、空き地をこの草が猛烈に埋め尽くしました。北九州では炭鉱の閉山が相次いだころ、その一帯にはびこりだし、「閉山草」と呼ばれていたといいます。
 あっという間に広がるのは、一株が数万個も種子をつけることもさることながら(そんな草はたくさんあります)、地下茎が広がって増えることにもあります。根っこのように地下をはう地下茎、この地下茎が他の植物を育ちにくくする物質を出すというのです・・・ちょっと怖い感じ・・・一時はすべてを負かし、占領したように見えるのです。
ところが増えすぎると自家中毒症状を起こし、自分が滅びてしまうのです。
 自分の出した毒で自滅・・・・思わず、人間社会のことにこじつけて考えてしまったものです。

 今この草、一時ほどはびこっていない印象があります。事実、減少してもいます。
高度経済成長の中で、悪役に仕立てられてきたこの草、はて、日本の生態系の中で、ちゃんと位置を得ていけるのでしょうか。日本の自然と折り合っていくのでしょうか














1 件のコメント:

  1. トコロジスト、面白くて、そして興味を 持たせる言葉ですね。
    七月の盛夏の頃、近所の商店のおばちゃんが😅「前橋は盆地だから夏は暑くてよいじゃあないよ(容易では無いの意らしい)」と私にのたまいました。驚いた私は体を固まらせたまま家に帰って,そして暫く考えました。これは学校教育が悪かった?!それとも市や県の啓蒙活動の不足!?その後、そのおばちゃんのお店 に行ってません。
    トコロジストと言う言葉で、この夏の出来事を思い出しました。
    セイタカアワダチソウは外来種とわかっていても、何故か嫌いになれない植物です。

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