マンガンを掘った跡
部屋の整理をしていて、黒い石を手に取りました。
これ、昔、下仁田町で掘られた鉱石のかけら。
マンガンの鉱石 下仁田町で採集 |
ところでこの石、磁石を狂わせるのです。
それと知らずに写真を撮っていたら、GPSがちゃんと働かず、位置情報がとれなかった・・と。
「 それじゃ、磁鉄鉱だろうさ、
下仁田町では、昔、近代的製鉄所まで
造られたのだから 」
と、誰でも思うことでしょう。
でも、違うのです。
採掘目的は、鉄ではなくて、マンガン。
この鉱石は磁鉄鉱ではない!!
写真がマンガンを掘った跡です。黒い部分が目的の鉱石 ⇓
黒い部分が帯のようにみえます ⇒
小規模ですが
まわりの岩石は、層状チャート ⇓
薄い層がたくさん見えています。
昔、こうした採掘跡で遊んだという、この山の持ち主に、この場所を教わりました。
磁石が狂う、という話も、もちろんご存知。
ところでマンガンって何?
← 「マンガン乾電池」 とあります。
最近はいろいろな電池がありますが、いちばん古くからあるタイプの乾電池、この中に入っている黒い粉が二酸化マンガン。
ここで、「どこかで聞いたような・・?」と思った方もいるかも?
小学校や中学校の理科の実験で酸素をつくるとき、過酸化水素水に入れた黒っぽい小さなかけらが二酸化マンガン、きっと「触媒」なんていう言葉がテストに出たはず。
鉄とマンガンの合金は硬く、鉄道のレールや橋などに使われ、ビール瓶のあの茶色っぽい色もマンガンだとか。鋼の強度・硬度に重要なもので、実は産業界にはとても大切なものとか。
磁性を持つ理由を、鉱物に詳しい方にうかがいました。この鉱石にありそうなマンガンをふくむものいくつかを教えていただきました。
★軟マンガン鉱(パイロルース鉱) MnO2 が主成分 黒い
これはまさに 二酸化マンガン。
マンガン鉱物が風化などで酸化してできたりするとか。他の成因もあるようです。
★ヤコブス鉱 MnFe2O4 黒くて磁性を持っている
磁鉄鉱のFe2+ をMn2+で置き換えたもの。 磁鉄鉱はFe3O4
(磁鉄鉱とは固溶体をつくる)
そうか、これが入っているのかあ
★鉱石に何やら白っぽい
ものが ⇒
菱マンガン鉱(ロードクロサイト)
MnCO3
これをピンク色と説明されて、ピンク? と聞き返してしまいました。
ま、いいか。「赤土」も、赤というより茶色だものね。
バラ色から赤の美しいものもあるのだとか。
他にもマンガンを含んだ鉱物としていろいろな名前が本に載っていますが、まずは満足。
こうした小規模な採掘は、戦後、海外からの安価な輸入品に押されて、皆、廃業となっていきました。多分、あまり利益にはならなかったのでは。
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阿寒・摩周湖を訪れたブラタモリ
「マンガン鉱物が水の流れる陸で作られている貴重な場所」
オンネトーの滝の水の流れる岩に、黒っぽいものが張り付いている。
ノリ?コケ?・・もうちょっと自然のことを知っている人なら、ランソウ? というかもしれないような見た目。
マンガン鉱物って、どこで生まれる?
深海の底にマンガン団塊というジャガイモかお団子のようなものが転がっているそうです。マンガンのたくさん入ったものが、どうやら海の中でできるらしい。軟マンガン鉱でできているとか・・・いろいろ複雑で難しそう・・・
とにかく、私たちの目の前でマンガン鉱物のできるのが見えるのは、とても珍しいことなのでしょう。
深海に放散虫というプランクトンが降り積もってできた岩石がチャート。
ここで見たマンガン鉱石は、見事な層状チャートの間に挟まっていました。
中古生層のチャートにはさまれた小規模な層は日本全国に見られるそうです。
チャートの生まれる深海底にマンガン団塊が転がっていて、それが今、脈状のマンガンの鉱石になっている・・・なんだか、つじつまの合う話に思えるのですが、どうなのでしょう。海底火山噴出に伴う海底熱水活動に関わるなどと説明しているものもありましたので、なかなか複雑なのでしょうか。
マンガン鉱床は他にもいろいろな成因があるようです。
ちょっとした山あいの岩からも、過去の自然の営みの神秘が感じられました。
こんな場所を教えていただいて、ありがとうございました。
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