2014年3月16日日曜日

大地の大きな構造 その4  本宿大陥没


④ 本宿(もとじゅく)大陥没

西牧川沿いに国道254号線が走っています。この道を内山峠方面に向かうと、まわりは山また山。それほど標高が高いわけではないけれど、とにかく山が続きます。車を降りて周囲をみると、ゴツゴツした凝灰角礫岩の急峻な谷やそそり立つ岩峰、貫入したマグマの冷え固まった岩体などが見えてきます。どれも昔の火山活動を思わせるものばかりです。しかも,この一帯を埋めつくすのですから、かなり激しい火山活動だったのではと思われます。今は噴火する火山の見られないこの地域に,かつてどんな活動があったのでしょうか。

下仁田町の西から南牧村にひろがるこの地域を調べようと、研究者・教員・学生などが集まり,団体で調査をはじめました。1965年のことです。そこで、大きな陥没構造のあることが明らかにされました。
沢すじはしばしば急峻な崖になり、この険しい山の中を歩くことを思うと、一人で調べるのでなく、仲間と一緒に歩けるだけでも心強いなあ、などと思ってしまいます。現在、下仁田自然学校の研究グループ・本宿陥没団体研究グループがこの地域を調べています。

およそ950万年前、下仁田の西部から南牧にかけて、直径10km深さ数百mの大陥没が発生しました。

本宿地域の山々・歩いてみると,急峻な地形が続きます
この巨大な窪地は今は見える形では残っていません。その後の火山噴出物で埋めつくされているからです。火山噴出物には火山灰や安山岩の岩片が多く、それらからできた凝灰角礫岩が大量に見られます。火山灰などが一部とけてかたっまた溶結凝灰岩も分布します。このときの陥没の縁に、ガラガラとくずれたてたまった角礫を見ることもできます。
マグマの貫入もたくさんあり、多くの貫入岩・岩脈も見られ、市野萱貫入岩体のような大規模なものもあります。
時々水がたまって湖ができていて、その堆積物が地層になってみつかり、陥没の内部の構造を知るのに役立っています。
兜岩でみられる湖成層が堆積した時は、大きな湖があったようです。静かに積もった地層の中に化石がたくさん見つかりました。木の葉や昆虫、カエルまでみつかり、保存の良い化石産地として有名でした。
陥没は2回あり、2回目は700万年前ころでした。
                                      
                                           ぐんまの大地 上毛新聞社 より

凝灰角礫岩の沢                                   安山岩(玄武岩)の貫入

流れた溶岩


水に洗われた凝灰角礫岩

変質して緑色がかっていることもある

                                                 
              
凝灰角礫岩の沢すじには大きな岩塊も(左は放置されたワサビ田)                  
                                                                                   






柱状節理のよくみえる岩体



これらの火山噴出物は、その後の浸食により、多様な地形を見せています。


じいとばあの岩峰・・・凝灰角礫岩の浸食の姿  (前にものせましたが、もう一度)
手前の石柱はじいとばあ、遠方に荒船山       写真 野村哲さん
じつはこの写真、撮ろうと思っても、なかなかと撮れるものではないのです。思いもかけずに出会った光景なのです。以下は下仁田自然学校名誉校長・野村さんの話です。
 自然学校の行事、御堂山登山の下見に出かけ、近道をしようとたどった道が途中で消え、それなら尾根に出ようと,きつい登りをやぶこぎ。たどりついた尾根で,びっくり。見たこともない石柱群と遠くに荒船山・・・この石柱群が「じいとばあ」であることを理解するのに時間がかかったというのです。夢中で写真を撮ったそうです・・・。「あまりのショックに、このあと、どういう道を選んで帰ったか,覚えていません」とか。二度と同じ場所からの写真は撮れないかも。2005年のことです。
 私としてはもう一つ、思うことが。このときは野村さんや名誉顧問の里見哲夫さんが出かけていますが、こんな山をすいすいと登り歩く諸先輩の皆さん(私よりずっと年上)のすごさに、感銘。私はついて行けないかも。


山頂が平らな荒船山 
荒船山  写真 ジオパーク推進室


平らな山頂は流れた溶岩。緻密で硬い安山岩で、浸食に耐えて残っています。
陥没の窪地がほぼ埋め立てられ,西側にあふれ出した時に流れた溶岩です。
溶岩は当時存在した大きな湖をうめたもので、平らな堆積物の上に平らに流れました。その後も平らな姿で残っているため、山頂付近は、1.3kmも平坦面が続きます。
溶岩の端は絶壁になり、見おろすのが怖いような、でも感激するような,そんな光景がひろがります。
登山客に人気の山でもあります。


2つこぶの 鹿(かなだけ)

  2つこぶが鹿岳、 左はクリッペの四ッ又山   絵 野村哲さん




硬い部分が滝になったり、他にもさまざまな地形が見られます。


溶岩が噴出した通り道のあとが、2つのこぶになって残っています。
安山岩で埋めつくされた通り道は硬く、削り残されて、飛び出して見えるというわけ。これを岩頸(がんけいといいます。
下の絵は岩頸部分のスケッチ
 節理のはいった安山岩です


兜岩で見つかった化石

かつての湖に静か積もった地層に、周囲の植物の葉などが含まれて化石になりました。
結構大きい湖だったようです。
          下仁田自然史館所蔵
化石は、植物ばかりか、小さな昆虫も見つかります。カエルが見つかったことでも有名です。なお、現在はここでは採取することはできません。
地元で化石を丹念に採集された茂木伊一さん(故人)は,その化石を
自然史館に寄贈されています。また,自然学校運営顧問の堀越さんも,多くの化石を持ってこられています。貴重な財産として,大切にしていきたいものです。

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前回紹介した,南蛇井層や平滑花崗岩ですが、先日、不通渓谷の橋のかかる部分の崖が崩落して、花崗岩らしい岩体が露出しています。現在通行禁止ですが、この様子が,下仁田自然学校運営委員の本多さんのブログ「下仁田ジオパーク応援団」に載っています。他に、自然学校活動の様子ものっています。ぜひごらん下さい。

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今年の冬は寒かった。やっと春。
ふきのとうは元気に顔をのぞかせているでしょうか。
 
ところで,フキノトウはフキの花って意識していたでしょうか。
よく見ると2種類あるということも、気づいていたでしょうか。
雌株と雄株とがあるのです。下がその解説。ちょっとわかりにくい・・・



 右の花は、雄株・雌株のどっち?
じつは華やかに見える方が雄株なのです。
雄株の花は花粉をつけます。種子はできません。
雌株の花は,おしべに花粉ができず、めしべのもとが種子になります。


下の写真のいちばん左が雄株の花、真ん中と右が雌株の花。雌株は何だか白い糸のようで、地味に見えます。
私の育った家の庭の隅にはフキがはえていましたが、みんな地味な花のフキノトウでした。なんだか貧相だなと思ったのを覚えています。ずっと,品種が違うからだと思っていました。京ブキとよんでいた,細い種類のフキでしたから。


やがて雄株のフキノトウは消えてなくなり、雌株のフキノトウはずんずん伸び、50cmにもなって、頂部ににふわふわ飛ぶ種をつけます。
このころ「これ何?」と質問すると、首をかしげる人がたくさんいます。

             野に咲く花 山と渓谷社 より



          フキノトウ、食べたいですね。ついでにちょっと、花を見てみませんか。







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