2014年3月23日日曜日

降りつもった火山灰 その1

  降りつもった火山灰

ネギ畑の火山灰

 日本人には火山はおなじみの光景。
子供の頃、ときおり浅間山が噴火して,火山灰が降ってきました。屋根や葉っぱの上にうっすら
積もった灰も、数日たつと,どこかに吹き飛んでしまいましたが。
東北の震災の後、「大地震の後しばしば火山噴火があるので、もしかして富士山が噴したら」
どと、テレビなどでも放送されていました。
富士山が噴火したら、当然,東京にも火山灰が飛んで来る・・・大被害!!

  今住んでいる場所に火山灰が厚く積もるって、想像できますか?
   さらに、昔の火山灰が,今でも厚く積もって残っているって,想像できますか?

東京にも富士山や箱根の山の昔の火山灰が積もって残っている・・・という話、聞いたことあでしょうか。
下仁田ネギの畑
積もった火山灰はやがて風化して赤土になります。・・・土になる?冬になると霜柱が立ち、溶けるとぐちゃぐちゃとぬかるあの土です。関東地方ではこれを関東ローム層とよんでいます。
長い霜柱 赤土におおわれた金剛萱にて


下仁田に赤土はありますか?・・・・・ネギ畑の土はどうでしょう?
下仁田から見た浅間山

ネギ畑の土をよく見ると、小粒の軽石が混じっています。火山の噴出物の混じっている証拠。
土は少し赤みがかった色にも見えるかも。(でも、えーっ、赤?といわれるかも。濃い茶色、黄色味がかるとか、いろいろ言われるかも。土の色の世界では、こんなのを赤といいます・・・)。

赤土の中からは、もとの火山灰に含まれていた鉱物の結晶がみつかることがあります。
学校の授業でネギ畑の土を持ってきて水で洗って、顕微鏡で観察しました。そこには鉱物の結晶が。この結晶をよく調べて、浅間山から飛んできた火山灰が含まれているとわかりました。

名産下仁田ネギを生んだのは、下仁田の気候と、浅間山の火山灰を含むこの土、
それと、ここに住んだ人々たちの努力だったのでしょう。


下仁田の火山灰

下仁田には浅間山以外の火山の火山灰もあるのでしょうか?
 はい、あります。
八ヶ岳、立山・・・・さらに、鹿児島から飛んできた火山灰まであります!
でも、??・・・八ヶ岳、立山って、火山?今,噴火してたっけ??・・・人の残した記録にはありませんね。ぼんやりして、気にもとめていなかった「活火山」とかの知識を,あらためて確認したくなります。
活火山の現在の定義は「おおむね過去1万年以内に噴火したか、現在活発な噴気活動のある火山」だそうです。


  下の図に、下仁田で見つかっている火山灰の噴出源を黄色でマークしてあります。
  鹿児島からも、山陰地方からも飛んできているのに、びっくりします。
  薄く積もったものでは,あとから地層の中でみつかるとは思えませんから、かなり厚く積もったのではないかな。
   なお、火山灰がみんな東に飛んでいくのは、上空にいつも吹いている偏西風のため。


   中国の黄砂も、この風によって日本に飛んできます。最近はPM2.5のほうが有名かな。
                                    地震と火山のたんけん隊 大月書店より

  • 上の図31番は桜島?姶良(あいら)? そもそも姶良って何?そんな火山、聞いたことないけど。 
      じつはこれ、今の桜島の火山ではありません。昔ここで大爆発があり、大量の噴出で地下に空っぽ部分ができ、そこが陥没して、鹿児島湾ができたというのです。膨大な量の火砕流・軽石・火山灰の噴出でした。 
    かつて,日本のあちこちで大噴火があり、そこが陥没しカルデラになったりしています。
  • この姶良の火山灰は,特に有名です。日本列島遙か遠く、東北まで見つかるというのですから(北海道まで見つかるとも聞きましたが、どこなのかよく知らないのですど・・・)。
  • この頃は人が日本列島に住み始めていたころなので、考古学にも、とても役立っています。時代決定にとても役立つわけですから。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
最近まで,下仁田では火山灰層はあまり見つかっていませんでした。
金剛萱の赤土の崖
ここに何層もの火山灰がある 

下仁田自然学校のメンバーの関東山地研究グループが、地質調査の際、コンニャク畑のわきに赤土の大きな崖が現れているのをみつけました。すぐに関東火山灰グループに連絡し、2007年から調査が始まりました。

ずっと赤土を見てきた方々は、「ただの赤土」に見える中から、次々と素性のわかる火山灰の層を見つけ出すのです。
「靴が汚れる」なんて言ってないで,赤土の斜面を登り、説明してもらって目をこらすと、だんだん火山灰が見えてきます。






下仁田でみつかった火山灰
下の表にあげた火山灰のほとんどのは金剛(こんごう)(がや)で見ることができます。この順番に層になって積もっています。
こんなに長い期間の火山灰が連続して観察できる場所は滅多になく金剛萱は関東周辺の火山灰研究にとって大切な場所といえます。

火山灰名
供給源
年代
特徴
記号
見られる場所
浅間板鼻黄色軽石
浅間山
1.5万年

AsYP
金剛萱
蒔田丘陵など各所
浅間板鼻褐色軽石
浅間山
2.52.4万年


AsB
金剛萱
蒔田丘陵など各所
浅間室田軽石
浅間山
2.8~2.7万年

AsM
金剛萱
姶良(あいら)Tn火山灰
九州鹿児島湾
(姶良カルデラ)
2.9万年
火山ガラスでキラキラする。電球のかけらのような形のガラス片
AT
金剛萱
大山倉吉テフラ
大山
5.5万年
肉眼ではっきりとは見えていないが、存在する
DKP
金剛萱
御岳第1軽石
(御嶽)
御岳火山
9.6万年

OnPm
金剛萱
立山D軽石
立山
10万年

DPm
金剛萱
八ヶ岳・川上オレンジ軽石
八ヶ岳
15万年

Yt-w
金剛萱
Tama128
八ヶ岳
35万年

Ol.py.C.A.

金剛萱
Tama126




金剛萱
Tama12
たぶん八ヶ岳



金剛萱






貝塩上宝テフラ
岐阜県焼岳付近
63万年

KMT
川井

他に黒姫山からの火山灰(20万年前)もみつかっています。                     

<質問いくつか>

l  赤土では、ほとんどの部分は粒子のみえない少しベタベタした土です。 
      大部分を占める、粒子のみえないような部分は何からできている? 
     ・火山灰などの火山噴出物
       ・ 黄砂        (大陸からやってきたもの)
     ・舞いあがったほこりなどが風化して粘土になったりしたもの など のようです 
 何mもある赤土の崖がすべて火山から直接降ってきたものというわけではなく、地面のに積もった
火山などが再び舞い上がりつもるといったことを、長年積み重ねたということもあると言えるのでし
ょう。 
表にあげた火山灰層は、大きな噴火で降り積もっったもの。だから層になって見え、含まれる鉱
組み合わせに特徴があったりするのでしょう。

l l赤 っぽい土はみんな降ってきた火山灰起源?
 そんなことはないと思います。赤色の起源は、含まれる鉄成分の酸化によります。鉄のさび、赤さ
びの色。関東ロームには鉄の成分がたくさん含まれると言うことでしょうか。
 沖縄など暖かい地域に行くと、土がずいぶん赤っぽかったりします。土地開発から赤土が流失し
、サンゴ礁に被害を及ぼしているということで、問題になったりします。沖縄は石灰岩の風化とのこ
とで、火山灰ではないですね。これがどうして赤くなるのか、調べて見ないとちょっとわ
かりませんが。
世界各地の「赤い土」、起源は何かなあ・・それぞれ検討してみてもいいかも。
 
 l 表にある記号は暗号のように感じられてしまうけど、どうやって決めたもの?
     それぞれがイニシャルのようなもの。

たとえばAT・・姶良(あいら)丹沢火山灰のこと。神奈川県の丹沢で調べられた丹沢火山灰と、九州に多量にあった姶良火山灰が同じものであることが判明し、二つを合わせて名前をつけ直しました。このイニシャルがAT。あいらのA,たんざわTで、専門家にとっては便利なものになっています。

 AS-YPは 浅間(AS)黄色(Y・イエロー)軽石(P・パミス)
    軽石のことを英語でパミスといい、そのP


さらに、火山灰を調査しているとき、この場所からは古い時代の石器が見つかり、ここは遺跡としても登録されることになりました。
金剛萱ナイフ型石器
よく似たものは,隣の佐久市の遺跡でたくさん見つかるということで、ここでは八風山山頂付近の緻密な安山岩を使っています。
このタイプの石器は後期旧石器時代初期のもので、
群馬県では今のところ一番古くて確実な岩宿遺跡の石器群につながるものだそうです。3万年といった昔のものになります。
下仁田地域は信州特産の黒曜石を関東地方に運ぶ「石材の道」だった(中村由克さんより)。

ところでこの場所、標高700mを超える,周囲より高めの場所。昔の人って、こんな場所を,平気で行き来していたのかなあ・・・沢沿いより,むしろ道がわかりやすかった?・・・

街道というと、江戸時代とかを思い浮かべてしまうのですけど、もっともっと遙かな昔から、人と物が行き交っていた・・・・そんな場所だったのかも。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


ハクモクレンが咲き出しました。白い花が咲き誇るのを見ると、つい植えたくなるけれど、放ってお
ば大木になって手に余るし、花はしばしば霜で一夜のうちに茶色くなって、がっかり。

農家の庭先にのびのび育ったハクモクレンがありました(下の写真)。
よく見ると、ほころびかけた花の先っぽが,みんな曲がっている。しかも、北を向いて。
ハクモクレンは コンパスツリーといわれます。蕾が北を向くから。コンパスは円を描くコンパスで
なくて,方向を知るための方位磁針のコンパス。
  蕾のほころぶ頃のほんの一時期の現象です。もしまだ蕾だったら、ちょっと気にして、見てみませんか。

山にはえる野生のコブシ、やタムシバも親戚の花で,同じ性質があります。山歩きの時、思い出たら、ちょっと観察を。




    よく日に当たった蕾の部分が、早く成長して,それで曲がるのでしょうか。分裂したての、うまれたばかりの小さな細胞の大きさが,成長してグンと大きくなる?細胞の数がふえる?どっちかな。前者かな・・それとも他の理由?

   木の芽・草の芽は光の方に曲がるけど、これはホルモンが関係していたはず。    
   


まだ芽の出ていないこの季節の梢には,大きな巣が目立っています。特に、ケヤキの木など、
目立ちますね。カラスの巣です。しばらくするとヒナの頭がのぞいていることもあります。  
子育てに必死の親は、通りかかった人を攻撃することもあります。 刺激しないように。
我が家のすぐ近くのカラスの巣です。
左の写真、どれが巣かわかりますか?真ん中の木の右上の梢の黒い塊です。


0 件のコメント:

コメントを投稿